◎継続性がある制度構築の重要性
情報提供や意見交換、コンサルティングの依頼など役員報酬にかかわるテーマはここ数年非常に多くなった。これは2000年初頭の企業業績が厳しい時期に役員退職慰労金の廃止を受けて、役員報酬そのものの制度や体系を改革する企業が急増したためである。
実際に企業を訪問すると、役員や経営企画・総務・人事などの部長クラスの方との面談になる。たいていが「本当に先が読みにくい時代になりました。役員も大変です。任期は1年になる、責任は重くなる。投資家からは鋭い質問が飛んでくる。四半期決算対応をしているうちに1年があっと間に過ぎていきます」という話から始まる。
「当社の売上は国内が7割、海外が3割ですが今後海外の比率が高まることは確実です。海外はアジアと欧州に展開しています」
「なるほど、そうすると海外関連部門の役員の責任は重くなりますね」
「その通りです。実際今の社長が就任してから役員報酬にも差がつき始めています。以前は役位に差があったのですが、最近は業績や役割・責任の大きさによる差がついてきたという印象です」
「ということは社長が独自に個々の役員の報酬を決定しているということですか」
「一応基本テーブルはありますが、それにプラス社長の評価が反映されるスタイルです」
「社長の評価の是非について社内で議論はありますか」
「概ね妥当な評価がされていると認識しています。社外取締役の意見も参考にしています」
「すばらしい、大変結構です。ただ老婆心ながら、いずれ社長が交代したときに妥当な評価が継続されるかが心配です」
「今回の依頼もその辺が重要なポイントです。社長のポリシーが継続されなくてはコーポレートガバナンスが機能しているとは言えません。今のうちに何らかのルールやガイドラインを設けて継続性がある役員報酬制度を構築したいと思います」
◎継続性がある制度構築の重要性
このように事業環境の見通し、現在の役員報酬の決定のしくみを伺いながら、制度構築が進んでいくことになる。概ね2~3回のミーティングを行うと方針の輪郭が見えてくる。
議論の中心は役位毎の基準額の設定、業績連動部分のあり方、役員退職慰労金廃止に伴う原資の再配分である。これが投資家や従業員をはじめとするステークホルダーに納得のいく説明ができるかがポイントだ。さらに個々の役員のモチベーションアップにつながらなければいけない。
このような議論と並行して、同業他社やベンチマークした企業の役員報酬の推定金額と顧客企業の実際の金額を比較するステージに移行していく。単純に水準が高い低いではなく、企業業績や役員の員数なども総合的に勘案して新報酬案のたたき台を提案することになる。
持続的な企業価値向上を果たすのが目的である。少なくとも今後10年の運用に耐えうる前提で設計を行うのである。
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