サマリー
◆投資家による要請の高まりを背景に、サステナビリティに関する開示基準の整備が進むなか、非財務情報は投資の意思決定に資するものとして重要性を増している。本レポートでは、企業が開示する非財務情報が企業価値にどの程度影響しているのか、非財務情報価値が何らか存在するという仮説のもと、定量的な検証を試みた。
◆企業価値は財務要因と財務以外の要因によって構成されると仮定する。まず財務要因による企業価値への影響モデルを構築し、当該モデルでは説明しきれない部分(残差)には、ESG(環境・社会・ガバナンス)やH(人的資本)等の非財務要因が反映されているものと整理した。そのうえで、財務要因の影響モデルに非財務要因の一部を加えたモデルを構築し、モデルの説明力がどの程度向上するのかを検証した。
◆検証の結果、財務要因による企業価値への影響モデルでは、企業価値の約7割が説明可能であることが確認された。また、開示された非財務情報の一部を加味するとモデル全体の説明力は向上した。もっとも、現段階の分析において、非財務要因によって追加的に説明される部分は、財務以外の要因の約1割にとどまっている。
◆これらの結果から、財務指標の改善は企業価値の基礎を成す要素である一方で、非財務情報の開示・充実は、それを補完する形で付加的な価値創造に寄与する可能性が示唆された。人的資本やガバナンスといった非財務情報の一部が、財務要因と比較すると限定的ではあるものの、企業価値と一定の関連性を有していることが確認された。
◆非財務情報を通じた企業価値向上には、非財務面での戦略が価値創造ストーリーを通じて経営戦略のなかに明確に位置付けられていることが前提となる。価値創造ストーリーを軸に、投資家との対話を通じて自社の強みや成長性を適切に伝え、理解を得ていくことが、持続的な企業価値向上に不可欠と言えよう。
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