サマリー
◆本レポートは、2026年2月に公益社団法人日本年金数理人会が公表した「確定給付企業年金に関する数理実務基準」及び「確定給付企業年金に関する数理実務ガイダンス」の改定を起点に、退職率の推定に関する新たな論点を整理し、データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性を示すものである。特に、退職率の算定において一般化加法モデル(GAM)の利用を排除しないという考え方が、今回の改定により明確化された点に着目する。
◆従来、退職率は年齢ごとの離散的な確率として表現されることが多かったが、年齢を連続変数として扱い、平滑化によって推定するデータサイエンスの手法であるGAMを用いたアプローチは、退職率算定に新たな分析視点をもたらすものである。
◆さらに、本レポートでは、退職率を年齢のみならず、勤続年数や制度特性と組み合わせて捉え直す分析視点の拡張可能性を示す。例えば、一定の勤続年数を条件とした割増給付が存在する制度においては、従来から用いられてきた年齢のみを前提とした退職率では、制度インセンティブによる影響を十分に反映できない場合がある。説明変数を2項目とすることにより、退職率を曲面として捉え、制度設計の意図と実際の行動との関係を、可視化することが可能となる。
◆年金数理は、長年にわたり退職という不確実な事象を定量的に取り扱ってきた分野であり、その知見は退職要因分析に高い親和性を有する。こうした知見を活用して退職要因分析を高度化することで、企業に対し、制度変更や人材施策の検討に資する定量的な示唆を提供できる余地が広がる。本レポートでは、今回のガイダンス改定を契機として、年金数理の専門性を活かした退職要因分析の可能性を示すとともに、その応用先としての人的資本分析へと発展し得る可能性と今後の展望について論じる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非財務情報は企業価値に寄与するか
非財務情報(人的資本・ガバナンス)を用いた企業価値への影響に係る定量的検証
2026年04月03日
-
M&Aによる人事制度統合検討の実務ポイント
職能資格制度における実務例を中心に
2026年03月31日
-
中小企業は退職金制度を導入すべきか
民間企業における退職給付制度の状況等に関する調査研究報告書より
2026年03月30日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
-
データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性
新たな退職率算定方法による退職要因分析への応用
2026年07月17日
-
AI時代に自社のサイバー対策は正解なのか?
~Claude Mythos騒動を受けた各企業の対応を確認する~
2026年07月17日
-
CPIの2025年基準への改定による影響
コアCPIの前年比上昇率は0.0~▲0.3%pt程度の下方改定か
2026年07月16日
-
中国:26年2Qは4.3%成長、内需が急減速
4月~6月は政府成長率目標の下限を下回る
2026年07月16日
-
AI時代の競争力を生むのは誰か? ~シリコンバレーとシアトルが示す「人材エコシステム」の力~
2026年07月17日
よく読まれているコンサルティングレポート
-
2026年6月株主総会の株主提案数(速報)
2026年6月株主総会の株主提案数は101社と過去2番目の多さ
2026年06月17日
-
外為法審査による買収案件中止とその示唆
外為法に基づく投資審査制度と判断のポイント
2026年07月10日
-
2026年6月株主総会に向けた論点整理
アクティビスト投資家等による株主提案数は過去最多
2026年06月04日
-
アクティビスト投資家の近時動向(2026年4月)
「変質」しつつあるアクティビスト投資家。「対話」から「交渉」に。
2026年04月09日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2025年9月版)
「同意なき買収」時代における買収対応方針の効果と限界
2025年09月24日
2026年6月株主総会の株主提案数(速報)
2026年6月株主総会の株主提案数は101社と過去2番目の多さ
2026年06月17日
外為法審査による買収案件中止とその示唆
外為法に基づく投資審査制度と判断のポイント
2026年07月10日
2026年6月株主総会に向けた論点整理
アクティビスト投資家等による株主提案数は過去最多
2026年06月04日
アクティビスト投資家の近時動向(2026年4月)
「変質」しつつあるアクティビスト投資家。「対話」から「交渉」に。
2026年04月09日
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2025年9月版)
「同意なき買収」時代における買収対応方針の効果と限界
2025年09月24日

