農業改革の進捗状況と農業金融

農業の企業化進展の兆し

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2016年11月28日

  • 中里 幸聖

サマリー

◆わが国の農業を活性化させるには、農業の企業化推進が重要であり、その鍵の一つが農地である。2014年版「規制改革実施計画」で挙げられた、①農地中間管理機構の創設、②農業委員会等の見直し、③農地を所有できる法人(農業生産法人)の見直し、は農地と企業の関係に関連する課題であり、2015年の法改正に反映され、実施段階に入ってきている。


◆数的にはまだ多くはないが、ここ数年は組織経営体がやや増加している。従来型の農家が今後も減少していくとすれば、農業生産の中心は組織経営体に移行していかざるを得ず、また新規就農者のハードルを下げるためにも組織的経営体の増加が期待される。


◆近年、農業そのものに対する融資残高はやや減少傾向にあるが、減少傾向にあるのはJAバンクであり、民間金融機関、政府系金融機関は融資残高額もシェアも徐々に拡大しつつある。民間金融機関の融資先は、組織的な経営を手掛けているような農業者が中心と推測され、農業の企業化推進が融資残高の面にも徐々に表れていると考えられる。


◆規制改革推進会議は、「農協改革に関する意見」(平成28年11月11日)を公表し、「攻めの農業」実現のための農協改革の方向性を打ち出しており、①生産資材調達機能、②輸出を含めた農産物販売機能、③これらの機能を最大限発揮させるための組織の在り方、④地域農協の信用事業の負担軽減等を挙げ、数年内の組織変革を求めている。当面の農業改革に関する焦点はこうした議論がどのような形で進んでいくかということとなろうが、より本質的には農業の企業化推進がどの程度結実するかが重要と考える。

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