民泊解禁とシェアリングエコノミーの健全な発展に向けて

~観光先進国フランスの民泊事情からの示唆~

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2018年05月11日

  • 経済調査部 市川 拓也

サマリー

◆フランスは外国人訪問数で世界一であり、観光先進国といえる。他方、首都パリ市では、観光客向けの民泊物件が増加するとともに、賃貸向けの家賃が高騰しており、結果、住民の人口が減少する事態に至っている。

◆日本で業法として民泊事業を規定する住宅宿泊事業法は、提供日数に年間180日の上限規制や細かい規制が設けられている上、地域によって条例で厳しい上乗せ規制も課されている。日本では空き家やアパートの供給過剰が問題となっていることに鑑みれば、パリ市のように民泊転用が既存の賃貸相場を上昇させるような事態は考えにくい。

◆しかし、パリ市での民泊をめぐる諸問題は、提供日数の上限規制を守らない事業者が多い点に端を発する。パリ市で登録さえ行わず上限規制を守らない事業者の排除が困難であるのと同様に、日本でも届出や委託を行わない者を容易に排除できないといった懸念も残る。

◆民泊を含むシェアリングエコノミーは今後の日本の経済社会にとって大きな可能性を秘めており、健全な発展が求められる。そのためにはシェア事業者(マッチングを行うプラットフォーマー)の適度な関与が必要であると考える。

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