サマリー
◆フランスは外国人訪問数で世界一であり、観光先進国といえる。他方、首都パリ市では、観光客向けの民泊物件が増加するとともに、賃貸向けの家賃が高騰しており、結果、住民の人口が減少する事態に至っている。
◆日本で業法として民泊事業を規定する住宅宿泊事業法は、提供日数に年間180日の上限規制や細かい規制が設けられている上、地域によって条例で厳しい上乗せ規制も課されている。日本では空き家やアパートの供給過剰が問題となっていることに鑑みれば、パリ市のように民泊転用が既存の賃貸相場を上昇させるような事態は考えにくい。
◆しかし、パリ市での民泊をめぐる諸問題は、提供日数の上限規制を守らない事業者が多い点に端を発する。パリ市で登録さえ行わず上限規制を守らない事業者の排除が困難であるのと同様に、日本でも届出や委託を行わない者を容易に排除できないといった懸念も残る。
◆民泊を含むシェアリングエコノミーは今後の日本の経済社会にとって大きな可能性を秘めており、健全な発展が求められる。そのためにはシェア事業者(マッチングを行うプラットフォーマー)の適度な関与が必要であると考える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
民泊ガイドラインと新法の規制条例
~国による民泊新法VS自治体による制限~
2018年01月18日
-
自治体によるシェアリングエコノミーの活用
~新たな地域の課題解決策として普及なるか~
2018年02月09日
-
自治体の「宿泊税」導入に向けた取り組み
~京都市における導入への動きと、宿泊税が広がる背景~
2017年10月12日
-
民泊新法案が閣議決定
~旅館業法改正と合わせ、宿泊関連事業の制度はどうなるのか~
2017年03月15日
-
シェアリングエコノミーへの期待と課題
~日本経済の健全な成長に向けて~『大和総研調査季報』 2016年秋季号(Vol.24)掲載
2016年12月01日
-
シェアリングエコノミーによる地域の課題解決
~IT技術の進歩が可能にする地方創生~
2016年11月10日
同じカテゴリの最新レポート
-
若者の奨学金返済の不安をどう解消するか
給付奨学金の拡充、貸与奨学金は有利子から無利子への流れを加速
2025年05月09日
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日