サマリー
◆本レポートシリーズNo.1~3では、法人税率引下げが経済に与えるプラスの影響を試算した。一点、懸念しなければならないのは、経済への好影響を考慮したとしても、減税による財政収支の悪化分をトレンドとして構造的・持続的に埋め合わせることはできない可能性が高いということである。本レポートでは、法人税減税について財政健全化とのバランスについて考えたい。
◆法人税率引下げの財源として、すでに実現している、あるいは見込まれる税収の上振れ分を充てる考え方もあるだろう。しかし、それは不確実な財源であり、ペイアズユーゴー原則を破るものといわざるを得ない。依然として財政健全化の見通しが立たない現状を踏まえると、上振れ分は財政健全化の財源に充てるのが先だろう。歳出削減はもちろんのこと、税体系を幅広く見直して財源を確保することが法人税率引下げの基本とされるべきである。
◆ある程度の大きさの税率引下げを行おうとすれば、財源を法人税制の枠外に求める必要もあるかもしれない。例えば、消費税率の引上げによって財政収支悪化の回避を見込める試算を行うと、消費税率を2%ptほど引き上げる必要がある。法人税率の引下げと消費税率の引上げという組み合わせで国民経済が改善する可能性についてさらに検討されてもよいのではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本の成長力はどうなるか
日本経済中期予測(2014年8月)2章、3章
2014年08月13日
-
法人税減税と日本経済
財政への影響を含めたマクロ・シミュレーション
2014年06月26日
-
法人税減税と国内設備投資
法人税率引下げが投資に与える効果のシミュレーション
2014年06月25日
-
法人税減税と企業の立地選択
法人税率引下げが対外・対内直接投資にもたらす影響の大きさ
2014年06月18日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日