法人税減税と国内設備投資

法人税率引下げが投資に与える効果のシミュレーション

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2014年06月25日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準

サマリー

◆シリーズレポート第2弾となる本稿では、法人税率の引下げがどのような波及経路を通じて実体経済に影響をもたらすのかを整理し、法人税減税による国内企業設備投資への影響を定量的に検討した。また、投資税額控除の場合との比較も行った。


◆法人税率の引下げが経済にもたらす効果は、①資本収益率の改善、②キャッシュフローの増加、③企業の立地選択への影響、④財政収支への影響、の4つに整理できる。財政収支への影響は他の3つの効果が出現した結果であり、税収の見積り次第で財政収支への影響はマイナスにもプラスにもなりうる。


◆法人税率を10%pt引き下げて企業の設備投資を刺激するシミュレーションを行ったところ、設備投資の水準は法人税減税を実施しないベースシナリオに比べて最大で2.5%程度上回り、実質GDPは0.3%強上回るという結果を得た。財政収支のGDP比はベースシナリオに比べて1%pt強の悪化となった。


◆既存の経済構造を前提とすると、実質GDPは企業が減税によって追加的に得たキャッシュフローほどは増加しない。法人税減税が企業マインドを大きく変化させて設備投資をダイナミックに増加させるためには、制度・規制改革や企業の経済見通しの好転、コーポレート・ガバナンスのあり方の見直しといった変化を想定する必要がある。


◆設備投資を拡大させることが目的であるなら、財政負担の面で投資減税の方が優れている。マクロモデルで試算すると、投資税額控除は法人税率引下げの約5分の1の財政負担で同様の効果を生むとみられる。ただし、投資減税は設備投資が多い資本集約型の産業や企業に有利となることは否めない。また、投資減税はそれが既得権益化しないよう、時限的でなければならない。

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