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法人税減税と日本経済

財政への影響を含めたマクロ・シミュレーション

2014年06月26日

政策調査部 経済システム調査グループリーダー シニアエコノミスト 神田 慶司

政策調査部 政策調査部長 鈴木 準

サマリー

◆本稿では、法人税改革レポートシリーズNo.1~2で示した試算結果をもとに、マクロモデルにいくつかの想定を盛り込むことで、法人実効税率の引下げが実体経済にもたらす影響を動学的かつ包括的に試算した。


◆レポートNo.1で示した対外直接投資の抑制や対内直接投資の増加に加え、レポートNo.2で示した資本収益率の改善による企業設備投資の拡大を想定すると(ケース①)、法人実効税率10%ptの引下げは実質GDPを5年目で1.2%強押し上げる。他方、財政収支はGDP比で0.8~0.9%ptほど悪化する。


◆ケース①の内容に上乗せする格好で、企業が減税によって得られるキャッシュフローを設備投資や雇用者報酬に十分に回すと想定すると(ケース②)、法人実効税率10%ptの引下げは実質GDPを5年目で2.20%押し上げる。財政収支の悪化度合いはケース①よりは小さくなるが、5年目でGDP比▲0.7%pt程度と、収支にプラスの影響まで期待することは難しい。


◆ケース②は“構造変化シナリオ”であり、考えられる経済効果を最大限に織り込んでいる。そのため、現実の経済はケース①と②の間にあると考えるのが穏当だろう。仮に、ケース①と②の中間と考えるとすれば、法人実効税率10%ptの引下げは実質GDPを5年目で1.7%程度上方にシフトさせ、財政収支のGDP比を▲0.8%pt程度変化させることになる。


◆実質GDPで1%台半ば強という実体経済の押上げ効果は決して小さくない。ただ、本稿のシミュレーションは財源なき減税となっている(財政問題を必ずしも十分には重視していない)点で、実現の蓋然性が十分かは明白でない。本稿のシミュレーションは、財政収支のトレンド(構造)を見た場合には、減税分を経済活動水準の引上げだけで埋め合わせることの難しさを示している。法人実効税率の引下げの効果を得るためにも、税率引下げを行うに際しては課税ベースの拡大などの検討が重要である。

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