法人税減税と企業の立地選択

法人税率引下げが対外・対内直接投資にもたらす影響の大きさ

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2014年06月18日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準

サマリー

◆注目されている安倍内閣の成長戦略において、法人税改革は目玉政策の一つである。もっとも、法人税改革には様々な論点があり、具体的・詳細な議論は当面続くとみられる。そこで、数回にわたり、法人税改革に関するシリーズレポートを公表したい。


◆日本の法人実効税率は2014年度から34.62%に下がったが、主要な輸出競争相手国であるドイツや韓国と比べて依然として高く、ましてや主な対外直接投資先の1つである中国に比べるとかなり高い。法人税率は企業が立地を選択する際の1つの要素に過ぎないが、法人税率が対外・対内直接投資に一定の影響を与えていることは確かだと考えられる。問題はその影響がどの程度の大きさかである。


◆パネルデータを用いた本稿の分析によると、日本の法人実効税率が1%pt引き下げられた場合、日本の対外直接投資は2.9%抑制され、対内直接投資は3.5%拡大する。


◆対外直接投資が抑制される分の資金は、事業活動を行う魅力が高まった日本国内で投資され、国内の設備投資や事業買収、起業などが活性化すると考えられる。現時点で、仮に法人実効税率が10%pt引下げられると対外直接投資額が3割減り、これは国内の民間企業設備投資の5%弱程度に相当する。


◆1%ptの税率引下げが与える影響は、変化率でみると対内直接投資の方が対外直接投資よりも大きいが、現在の対内直接投資の規模が小さいため変化額でみれば対内直接投資への影響は小さい。対外直接投資関数と同様の説明変数で推定された対内直接投資関数の全体的な説明力は対外直接投資関数に比べて低く、起業のしやすさなど税制以外の制度的要因も対内直接投資を拡大させていく上で重要であると考えられる。

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