サマリー
税制抜本改革法で検討が求められている消費税増税時の3つの低所得者対策の選択肢と、それが実現するまでの暫定的な措置について考察する。
総合合算制度は再分配政策として理念的には優れているが、議論が進められている気配がほとんどなく、番号法もその実施を想定していないようだ。給付付き税額控除は、その目的が単なる消費税の逆進性対策であるのか、より広く、税制を使った所得再分配政策であるのかなど、制度の軸足を見定めていく必要がある。ただ、番号制度の定着が前提であるため、導入までには多少の時間を要するだろう。消費税の複数税率は一般の人々にとって負担の軽減が実感しやすいメリットがあるものの、逆進性対策の効果が薄く、導入する場合には減収分に見合う財源の確保が求められる。新たな政治コストの発生や経済活動への歪みが大きいことも懸念される。
低所得者対策は、消費税の枠を超えた税制全体や歳出の両面から設計されるべきである。給付付き税額控除は検討すべき点が残されているが、簡素な給付措置からの移行が想定されること、所得課税の再構築の中の重要な要素であることなどから考えて、重点をおいて導入に向けた議論を本格化すべきだろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
消費税増税等の家計への影響試算(2015年度予算案反映版)
2011年から2018年までの家計の実質可処分所得の推移を試算
2015年01月27日
-
消費税増税先送りに伴う他政策への影響
住宅ローン減税、自動車税制、年金制度、給付措置などに影響
2014年11月21日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日