消費税増税と低所得者対策

~求められる消費税の枠内にとどまらない制度設計~『大和総研調査季報』 2014年新春号(Vol.13)掲載

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2014年03月03日

  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

サマリー

税制抜本改革法で検討が求められている消費税増税時の3つの低所得者対策の選択肢と、それが実現するまでの暫定的な措置について考察する。


総合合算制度は再分配政策として理念的には優れているが、議論が進められている気配がほとんどなく、番号法もその実施を想定していないようだ。給付付き税額控除は、その目的が単なる消費税の逆進性対策であるのか、より広く、税制を使った所得再分配政策であるのかなど、制度の軸足を見定めていく必要がある。ただ、番号制度の定着が前提であるため、導入までには多少の時間を要するだろう。消費税の複数税率は一般の人々にとって負担の軽減が実感しやすいメリットがあるものの、逆進性対策の効果が薄く、導入する場合には減収分に見合う財源の確保が求められる。新たな政治コストの発生や経済活動への歪みが大きいことも懸念される。


低所得者対策は、消費税の枠を超えた税制全体や歳出の両面から設計されるべきである。給付付き税額控除は検討すべき点が残されているが、簡素な給付措置からの移行が想定されること、所得課税の再構築の中の重要な要素であることなどから考えて、重点をおいて導入に向けた議論を本格化すべきだろう。


大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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