2024年10月07日
サマリー
◆近年、欧米では投資や金融に関する情報を発信する「フィンフルエンサー」がソーシャルメディア上で存在感を強めており、特にZ世代の投資判断に影響を及ぼしている。フィンフルエンサーの投稿は若年層を中心とした人々の投資意欲を高める一方で、①投資詐欺・相場操縦、②不適切な金融プロモーション、③不適切な投資助言といった問題も引き起こしている。
◆米国証券取引委員会(SEC)は、ソーシャルメディアを利用した投資詐欺や不適切な金融プロモーションを摘発してきた。しかし、フィンフルエンサーが1940年投資顧問法に定められた「投資顧問」に該当するか否かは曖昧で、彼らの情報発信を規制しきれない現実もある。
◆他方で、リテール投資家保護のための規制が強化されてきた欧州では、積極的なフィンフルエンサー対策が進められている。オランダやドイツ、フランスの規制当局は、フィンフルエンサーによる不適切な投資推奨を防ぐためのガイダンスや法律を導入した。また、英国金融行動監視機構(FCA)はソーシャルメディアでの金融プロモーションに関する詳細なガイダンスを発表し、フィンフルエンサーと委託元企業の責任を明確化した。
◆日本でも投資や金融に関するソーシャルメディア上の情報発信が増えており、証券取引等監視委員会は2024年7月に初めて「風説の流布」に対する課徴金納付命令を勧告した。金融機関が若年層との接点強化を目的にフィンフルエンサーを活用する動きもあり、欧米の先行事例はフィンフルエンサーに関する制度整備の参考になろう。
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