サマリー
- 実質GDP成長率見通し:20年度▲5.0%、21年度+3.8%、22年度:+2.3%:本予測のメインシナリオでは、国内外でワクチン接種が始まったことを受け、21年度後半から22年度にかけて経済活動の正常化が進むことを新たに想定した。実質GDP成長率見通しは20年度で▲5.0%、21年度で+3.8%、22年度で+2.3%である。21、22年度はワクチン接種の進展や米国経済見通しの改善もあって高めの成長を見込んでいる。もっとも、当面は感染拡大リスクが大きく、緊急事態宣言の延長や再発出を余儀なくされる可能性は小さくない。仮に変異株が国内で流行すると、21年度の死者数はメインシナリオに比べて約4,800人増加し、個人消費額は約24兆円減少する。変異株が流行しなくとも、ワクチン接種ペースが想定よりも遅れれば、21年度中に宣言が再発出される可能性がある。
- 論点①:脱炭素化政策の国際比較に見る日本の課題:20年はコロナショックという大きな社会的・経済的な混乱のもと、各国が相次いで脱炭素化の実現に向けた計画や取り組みを具体化させた1年であった。欧州では復興を目的とする大型基金「次世代EU」がグリーン関連投資を加速させるとみられ、米国ではバイデン大統領が50年までの脱炭素化の実現を目標に掲げ、4年間で2兆ドルの巨額投資を行うことを選挙公約としていた。こうした国際的な脱炭素化の潮流は、保護主義的な政策リスクの高まり、新規産業の早期育成、炭素国境調整制度への対応といった課題に日本が直面していることを浮き彫りにする。日本が脱炭素化の実現に向けて産業構造を転換させる上では、労働市場における雇用調整速度の遅さ及び労働市場政策支出の少なさが課題となろう。
- 論点②:コロナ禍で激変した輸出環境はワクチン普及でどう変わるか?:20年はコロナ禍で世界の財貿易が大きく縮小したが、感染症対策や在宅勤務に関連した財などで特需が発生した結果、中国の輸出シェアは急速に高まった。感染症対策に関連した財の中国依存は足元で弱まりつつある一方、テレワークの拡大・定着やデジタル化を背景に情報関連財の需要は底堅く推移すると見込まれるため、21年の中国の輸出シェアは感染拡大前をやや上回る水準で落ち着くだろう。日本の財輸出は海外経済の正常化に沿って回復基調が続くと見込まれる。とりわけ米国の製造業の回復が鍵となろう。サービス輸出については、国内外でワクチンの接種が進み、入国規制の緩和で中国や米英などからの訪日観光客が増加することにより、22年に急速に回復するだろう。
- 論点③:ポストコロナの過剰債務問題:コロナ禍において世界の債務残高は急増しており、中でも政府部門での増加が先行している。政府債務の持続性は低金利に支えられていることから、今後の金利動向が重要なポイントとなる。一方、民間債務は当面のリスクは限定的だが、一部の国では警戒すべき水準にある。今後世界経済が正常化に向かう過程での政策の変化に注意が必要となろう。テールリスクとしては、FRBの金融緩和縮小が市場に動揺を与えた場合、新興国からの資金流出が挙げられる。新興国の多くは過去の経験から資金流出への耐性を高めているが、現在も危機に対して脆弱なアルゼンチン、トルコ、カザフスタンなどには警戒が必要である。
- 日銀の政策:予測期間中のCPIは、20年度に前年割れする一方、21年度は景気回復や原油価格の上昇により前年比+0.4%とプラスに転換し、22年度は同+0.8%に高まるだろう。感染拡大の長期化が予想される中、物価の基調は緩やかものにとどまる見込みであるため、日銀はコロナ危機対応策を段階的に縮小させる一方、極めて緩和的な金融政策を当面維持するとみている。
【主な前提条件】
(1)公共投資は20年度+4.7%、21年度+1.9%、22年度+1.1%と想定。
(2)為替レートは20年度105.7円/㌦、21年度105.0円/㌦、22年度105.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は21年+5.8%、22年+4.1%とした。
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