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第201回日本経済予測

米中摩擦はどこに向かうのか?

2019年05月24日

調査本部 常務取締役 調査本部副本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

経済調査部 シニアエコノミスト 佐藤 光

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

経済調査部 シニアエコノミスト 小林 俊介

経済調査部 研究員 渡邊 吾有子

経済調査部 研究員 廣野 洋太

経済調査部 エコノミスト 鈴木 雄大郎

経済調査部 研究員 小林 若葉

経済調査部 研究員 田村 統久

サマリー

  1. ゼロ成長継続。本格的回復・拡大への回帰には未だ長い道のり:1-3月期のGDP発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2019年度が前年度比+0.5%、2020年度が同+0.5%である。先行きの日本経済は、引き続き潜在成長率を下回る低空飛行を続ける公算が大きい。外需が振るわない中、相対的に重要性が増している内需も不振である。2018年秋以降の原油価格の下落は一時的に家計の実質所得を下支えしてきたが、足下で原油価格が再度上昇に向かっていることを受け、今後はこうした好材料が剥落する。本予測では以下の三つの論点を検証した。
  2. 論点①:米中摩擦はどこに向かうのか?:そもそも激化する米中摩擦はどちらに有利なのか。第一に、経済構造から判断すると中国が被る悪影響の方が大きい。しかし、第二に、関税引き上げに伴う「ブーメラン効果」に注目すると、制裁措置の規模が大きい米国経済により深刻な悪影響が生じるとみられる。中国が米国の制裁措置に対して抑制的に反撃する、いわば「持久戦」を挑むことが、米国に不利に働こう。とはいえ、第三に、米国にはまだ多様な政策カード・交渉カードが残っており、インフラ投資や金融緩和といった財政・金融両面の政策発動余地がある。このように、米中間の摩擦は、基本的に「米国が有利」な構図であると捉えておくべきであろう。他方、底流にある「資本主義対共産主義」という体制間の覇権争いは、10~20年間程度の時間軸で続く可能性がある。
  3. 論点②:日本の輸出は回復するのか?:日本の実質輸出はほぼ横ばいで推移すると見込まれる。世界経済の先行きにおいて注目すべきは、中国景気と米中追加関税の影響だ。中国経済の回復はしばらく時間がかかるものの、既に景気悪化局面からは脱した可能性がある。今後中国政府の景気テコ入れ策により需要の増大が期待されるが、日本の対中輸出への恩恵が限定的な公共投資が中心となるだろう。「二次的効果」を考慮した米中追加関税による日本への影響は、米中が財政支出をしない場合で、実質GDPを▲0.13%~▲0.22%下押しする。一方で、両国が財政出動すれば、日本経済への悪影響はかなり抑えられる。関税増収分のうち、米中両政府がどの程度財政出動に割り振るかが、日本経済にとっても重要なポイントになる。
  4. 論点③:省人化投資の現状と課題:大企業ではこれまで製造業を中心に省人化投資を進めてきたこともあり、現時点で省人化投資の動機が強まる状況にはない。利益配分を見ても、大企業において雇用関連(新規雇用の拡大+従業員への還元)への配分は高まっていない。一方、中小企業では雇用不足感が強く、利益を雇用関連へと回す傾向が顕著になりつつあり、潜在的な省人化投資の動機は強いと推察される。しかし、中小企業では労働分配率が高い上に、設備投資はキャッシュフローからの影響を強く受けるため、省人化投資を行う余裕がない。省人化投資を促すには、中小企業の合併など企業規模の拡大を促す政策を進めることにより、設備投資を抑制するキャッシュフロー制約を緩和していくことが重要である。
  5. 日銀の政策:予測期間中のCPIは前年比ゼロ%台半ばで推移すると見込まれるため、日銀は現在の金融緩和策の枠組みを当面維持する見通しである。長期戦を見据えて、インフレ目標の柔軟化などが課題となろう。

【主な前提条件】
(1)公共投資は19年度+4.6%、20年度+1.3%と想定。
(2)為替レートは19年度109.6円/㌦、20年度109.6円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は19年+2.6%、20年+1.9%とした。

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