サマリー
◆個人消費を抑制してきた3つの短期的要因:2014年の消費税増税から2年半以上が経過したが、依然として個人消費は低迷を続けている。こうした消費低迷の短期的要因として、①年金特例の解消、②可処分所得の伸び悩み、③過去の景気対策の反動、が挙げられる。2012~14年度までの期間において、それぞれの要因が個人消費に与える影響を試算すると、「①年金の特例解消」は▲0.4%pt、「②可処分所得の伸び悩み」は▲0.7%pt、「③過去の景気対策の反動」については▲0.2%pt、合計で▲1.3%pt程度、個人消費に対してマイナス寄与となっていたと計算される。(→詳細は、熊谷亮丸他「第191回 日本経済予測(改訂版)<訂正版>」(2016年12月16日)参照)。
◆中長期的には将来不安などの構造的な問題が消費の重石:中長期的な観点では、節約志向の強まりや将来不安の高まり、若年層の雇用、といった構造的な問題が個人消費の重石となるだろう。しかし、これらの要因は、容易に解消させることが難しい構造的な問題であり、将来にわたって個人消費の拡大を妨げる要因となる公算が大きいと考えられる。
◆社会保障制度の再構築や労働市場改革の実施が望まれる:中長期的に個人消費を拡大させていくために、政府は持続可能な社会保障制度を構築するなどの改革を推進し、国民が漠然と抱いている将来への不安感を払拭する必要がある。また、「同一労働・同一賃金の原則」の導入などにより労働市場の二極化を是正することを通じて、若年労働者の雇用環境を改善させることなどが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
主要国経済Outlook 2025年9月号(No.466)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年08月25日
-
マーケットは堅調も、米国経済の不透明感は増す
2025年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日