日本経済見通し:個人消費はなぜ低迷を続けているのか?

中長期的には構造的な問題の解消に向けた取り組みが必須

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2017年01月20日

  • リサーチ本部 副理事長 兼 専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 岡本 佳佑
  • 小林 俊介
  • 前田 和馬
  • デジタルソリューション研究開発部 田中 誠人

サマリー

個人消費を抑制してきた3つの短期的要因:2014年の消費税増税から2年半以上が経過したが、依然として個人消費は低迷を続けている。こうした消費低迷の短期的要因として、①年金特例の解消、②可処分所得の伸び悩み、③過去の景気対策の反動、が挙げられる。2012~14年度までの期間において、それぞれの要因が個人消費に与える影響を試算すると、「①年金の特例解消」は▲0.4%pt、「②可処分所得の伸び悩み」は▲0.7%pt、「③過去の景気対策の反動」については▲0.2%pt、合計で▲1.3%pt程度、個人消費に対してマイナス寄与となっていたと計算される。(→詳細は、熊谷亮丸他「第191回 日本経済予測(改訂版)<訂正版>」(2016年12月16日)参照)。


中長期的には将来不安などの構造的な問題が消費の重石:中長期的な観点では、節約志向の強まりや将来不安の高まり、若年層の雇用、といった構造的な問題が個人消費の重石となるだろう。しかし、これらの要因は、容易に解消させることが難しい構造的な問題であり、将来にわたって個人消費の拡大を妨げる要因となる公算が大きいと考えられる。


社会保障制度の再構築や労働市場改革の実施が望まれる:中長期的に個人消費を拡大させていくために、政府は持続可能な社会保障制度を構築するなどの改革を推進し、国民が漠然と抱いている将来への不安感を払拭する必要がある。また、「同一労働・同一賃金の原則」の導入などにより労働市場の二極化を是正することを通じて、若年労働者の雇用環境を改善させることなどが期待される。

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