日本経済見通し:Brexitを受けて欧州で金融不安が再燃すると何が起きるのか?

日本経済は緩やかに回復する見通しだが、海外発の下振れリスクも

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2016年08月22日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 岡本 佳佑
  • 小林 俊介
  • 齋藤 勉
  • 前田 和馬
  • デジタルソリューション研究開発部 田中 誠人

サマリー

経済見通しを改訂:2016年4-6月期GDP一次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2016年度が前年度比+0.9%(前回:同+0.7%)、2017年度が同+0.9%(同:同+0.7%)である。足下で日本経済は「踊り場」局面が継続しているものの、先行きに関しては、①実質賃金の増加、②原油安と交易条件の改善、③経済対策の策定、などの国内要因が下支え役となり、緩やかに回復する見通しである。ただし、中国を中心とする海外経済の下振れリスクには細心の注意が必要となろう(→詳細は、熊谷亮丸他「第190回 日本経済予測」(2016年8月19日)参照)。


Brexitを受けて欧州で金融不安が再燃すると何が起きるのか?:今回のレポートでは、Brexitが決定したことで起こり得る、金融システムを通じたリスクについて定量的に検証した。Brexitを受けた足下のリスクは英国における不動産価格の下落であるが、仮に不動産価格が急落しても英国銀行、英国経済、世界経済への影響は限定的だ。また、イタリアの不良債権処理問題は、イタリア経済には一定の打撃を与え得るが、世界経済への影響は軽微なものにとどまる。ただし、これらの問題が複合化して、欧州の金融システム全体に危機が波及した場合、世界GDPを2.7%、日本のGDPを1.9%下押しする可能性がある。今後も欧州の金融システムの動向からは目が離せない状況が続くだろう。


日本経済のリスク要因:日本経済のリスク要因としては、①中国経済の下振れ、②米国の「出口戦略」に伴う新興国市場の動揺、③地政学的リスクを背景とする「リスクオフ(円高・株安)」、④英国のEU離脱や欧州金融機関のデレバレッジ、の4点に留意が必要である。

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