2026年09月30日
サマリー
◆生成AIをめぐる競争の焦点は、汎用的な基盤モデルの性能向上に加え、AIを特定の産業や業務に組み込むことへと広がりつつある。そこで問われるのは、処理時間の短縮や品質の向上といった、測定可能な業務上の成果である。その中で注目されるバーティカルAIは、特定の産業や専門領域の課題解決に重点を置いたAIである。その提供形態は、業界特化モデル、業務特化AIアプリ、バーティカルAIエージェントなど多様である。米国ではバーティカルAIへの企業支出が増加しており、事例からは、日常業務への導入が進むほか、顧客対応など、顧客向け業務に活用する事例も現れている。
◆バーティカルAIの導入が先行している領域には、①業務量が多く反復性が高い、②成果指標が明確である、③専門データが蓄積されている、④専門家不足への対応ニーズが大きい、⑤人による確認を業務プロセスに組み込みやすい、という特徴が多く見られる。これらの条件の現れ方は一様ではないものの、バーティカルAIの普及は、業界そのものよりも、対象業務にこうした条件がどの程度整っているかに左右されると考えられる。
◆実装には、外部サービスの活用、外部技術を活用した自社主導の実装、複数事業者による共同実装など、多様な形態が見られる。外部サービスの活用には比較的速やかに本番導入できる利点がある一方、自社業務への適合には追加の設定や検証が必要となる。自社主導の実装は、自社データや業務知識を反映しやすいが、AI開発人材や継続的な運用体制を要する。ユーザー企業と外部事業者がそれぞれの強みを持ち寄るエコシステムの重要性が高まると考えられる。
◆日本企業は、人手不足への対応、現場データや業務知識の蓄積、正確性や品質を重視する業務慣行などの面で、バーティカルAIの導入に適している。一方、導入効果を引き出すには、反復性の高い対象業務を選定し、熟練者の知見を判断基準や確認手順まで含めて形式知化し、AIが利用できる状態へ転換する必要がある。実装にあたっては、競争力の源泉として保持すべきデータや業務知識を見極めた上で、必要に応じて外部のAIモデルやパートナーを戦略的に活用することが重要となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年8月全国消費者物価
電気・ガス料金支援でエネルギー価格下落、コアCPI上昇率は低下
2026年09月18日
-
日銀、9月会合で1.25%に利上げ 今後も利上げ路線を堅持
家計の利払い負担増は賃金上昇が吸収も利上げ長期化リスクに留意
2026年09月18日
-
2026年8月貿易統計
中東情勢による資源高が続き、4カ月連続の貿易赤字
2026年09月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

