熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
サマリー
◆わが国の潜在成長率を高めるためには、①労働投入量、②資本ストック、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要がある。
◆第一に、労働投入量に関しては、「健康・就労継続」「外国人・女性活躍」「労働市場改革・就労促進」に関連する政策により、政策効果が最大限発現すれば、潜在GDPを2040年度で14.6%(86兆円)程度押し上げると試算される。
◆次に、資本ストックに関しては、3つの側面から潜在GDPの増加に寄与することが期待される。第一に、資本ストックの量的な側面からは、実際の資本ストックと、当社が推計した「最適資本ストック(=資本と労働の相対価格の関係などから企業の利潤が最大化される資本ストック)」とを比較すると、わが国の資本ストックは290兆円程度不足している可能性が示唆される。第二に、質的な側面からも、設備の老朽化により、わが国の資本生産性(=GDP÷資本ストック)は主要国(フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の5カ国の平均)と比べて10%程度、押し下げられている。第三に、資本ストックの配分という側面でも、日本では資本ストックが低生産性分野に張り付いていることで、資本生産性が主要国と比べて18%程度、低下している。
◆第三の要素である「TFP(全要素生産性)」に影響する主要な項目について国際比較を行うと、わが国が見劣りするのは、①人的資本投資、②新規事業の創出、③労働者の多様性、④外資系企業の参入等であり、政府はこれらの項目に優先的に取り組む必要がある。
◆経済の3要素の状況によって、2040年度までの日本経済には「現状投影」「衰退」「高成長」という3つのシナリオが考えられる。わが国が目指すべき「高成長シナリオ」では、労働投入量の増加、資本ストックの積み上がり、TFPの改善が概ね3分の1ずつ寄与する形で、実質GDP成長率は年率+1.5%に高まり、2040年度の名目GDPは1,000兆円を超える計算となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年1-3月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.9%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年05月13日
-
過去最大となった機械受注残高、その背景と影響は?
受注機種の偏在などで機械投資に対する機械受注の先行性が低下
2026年05月13日
-
2026年3月消費統計
サービスは強いものの財が弱く、総じて見れば前月から小幅に減少
2026年05月12日
最新のレポート・コラム
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
AIが変える議決権行使助言業
中立性・客観性確保のための利用を訴求へ
2026年05月13日
-
2026年1-3月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.9%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年05月13日
-
ポピュリズム・スパイラルの経済学
中技能労働者の賃金低下が招く「悪循環」
2026年05月13日
-
愛される会社の企業価値
2026年05月13日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

