サマリー
◆岸田文雄前政権が打ち出した「三位一体の労働市場改革」は、石破茂政権にも引き継がれている。同改革の柱の一つである「ジョブ型人事」の普及には足元で進展が見られ、内閣官房などは2024年8月28日に導入事例集にあたる「ジョブ型人事指針」(以下、「指針」)を発表した。ジョブ型人事の下では職種別に報酬水準が定まり、採用されるため、転職にかかる透明性の向上や外部労働市場の活性化につながることが期待される。
◆「指針」によると、ジョブ型人事を導入した先行20社は職種や役割に紐づける形で等級・報酬制度を構築している。報酬面では家族手当などが廃止される一方、行動評価などにより属人的な要素も加味される。社内での円滑な労働移動を促すにあたり、社内公募制の拡充や、社員の自律的なキャリア意識や専門スキルの向上の支援なども行われている。人事制度を運用する権限を各事業部門に移管している点も特徴的だ。
◆こうしたジョブ型人事の取り組みは、個社レベルでは人材獲得にかかる競争力の向上や、柔軟な人材配置の実現などで成果を上げている。しかし、円滑な労働移動を促すような職務やスキル、報酬水準の「標準化」が大きく加速しているとはいい難く、ジョブ型人事の更なる普及に向けては人事人材の不足なども課題となる。職業情報のインフラ整備や、職業訓練の質と量の改善などへの政府の積極的な取り組みが不可欠だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月全国消費者物価
エネルギー高対策の補助縮小や食料価格高騰が物価を押し上げ
2025年05月23日
-
AI時代の日本の人的資本形成(個人編)
AI時代を生き抜くキャリア自律に向けた戦略
2025年05月22日
-
2025年3月機械受注
民需(船電除く)は事前予想に反して2カ月連続で増加
2025年05月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日