少子化対策は費用対効果の観点からのブラッシュアップが必要

マクロ・ミクロの出生率分析に基づく政府施策の効果検証

RSS

2024年08月26日

サマリー

◆大和総研では、近年の出生率の変動要因について、マクロ・ミクロ両面からの分析を実施した。本稿ではこの分析結果をもとに、岸田文雄政権が策定した「次元の異なる少子化対策」の効果検証を行った。

◆2017年度以後の出生率の低下幅の約4割は有配偶出生率低下の寄与度によるものだ。出生率の回復には、被保険者・被扶養者それぞれの有配偶出生率の上昇が必要となる。

◆被保険者女性は出産年齢のピークが30代前半にあり、子どもをもう1人持つための時間的猶予が短い。女性が被保険者の世帯に向けての少子化対策としては、これまで行われてきた仕事と子育ての両立支援だけでなく、年齢や健康上の理由への対処も必要だ。スウェーデンでは第一子出産後早期に第二子を持つ者を支援する「スピード・プレミアム」という制度があり、日本でも導入を検討すべきだ。

◆被扶養者女性は2018年度以後出生率が急落している。妊産婦の中で被扶養者が少数派となる中で、女性が被保険者の世帯との所得格差を意識しやすくなったためと考えられる。大和総研の試算では、女性が被扶養者で一定所得以下の世帯には、現金給付が出生率にプラスの効果を持つことが確認された。在宅育児手当の導入は、こうした世帯にピンポイントで支援を行える費用対効果の高い政策であろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート