サマリー
◆大和総研では、近年の出生率の変動要因について、マクロ・ミクロ両面からの分析を実施した。本稿ではこの分析結果をもとに、岸田文雄政権が策定した「次元の異なる少子化対策」の効果検証を行った。
◆2017年度以後の出生率の低下幅の約4割は有配偶出生率低下の寄与度によるものだ。出生率の回復には、被保険者・被扶養者それぞれの有配偶出生率の上昇が必要となる。
◆被保険者女性は出産年齢のピークが30代前半にあり、子どもをもう1人持つための時間的猶予が短い。女性が被保険者の世帯に向けての少子化対策としては、これまで行われてきた仕事と子育ての両立支援だけでなく、年齢や健康上の理由への対処も必要だ。スウェーデンでは第一子出産後早期に第二子を持つ者を支援する「スピード・プレミアム」という制度があり、日本でも導入を検討すべきだ。
◆被扶養者女性は2018年度以後出生率が急落している。妊産婦の中で被扶養者が少数派となる中で、女性が被保険者の世帯との所得格差を意識しやすくなったためと考えられる。大和総研の試算では、女性が被扶養者で一定所得以下の世帯には、現金給付が出生率にプラスの効果を持つことが確認された。在宅育児手当の導入は、こうした世帯にピンポイントで支援を行える費用対効果の高い政策であろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
「2人目の壁」が近年の出生率低下の大きな要因に
被保険者・被扶養者別の有配偶率と有配偶出生率の推計結果
2024年06月25日
-
医療保険属性別(被保険者・被扶養者別)出生率の推計結果:2022年度版
健保組合は3年ぶり、協会けんぽは7年ぶりに被保険者出生率が低下
2024年05月29日
-
「次元の異なる少子化対策」実現への道筋
まずは政策効果が大きい両立支援策の実施を
2023年05月29日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年9月消費統計
衣料品など半耐久財が弱く、総じて見れば前月から小幅に減少
2025年11月07日
-
人手不足下における外国人雇用の課題
労働力確保と外国人との共生の両立には日本語教育の強化が不可欠
2025年11月06日
-
消費データブック(2025/11/5号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年11月05日


