サマリー
◆医療保険属性別(被保険者・被扶養者別)の合計特殊出生率(TFR)につき、新たに、有配偶率と有配偶出生率(有配偶者の出生率)に分解した推計を行った。
◆2010年度以後の被保険者女性の推計TFRの上昇分の3割程度は有配偶率の上昇、7割程度は有配偶出生率の上昇による。2022年度時点で、被保険者女性の完結出生子ども数(夫婦の最終的な出生子ども数の期待値)は1.5人強とみられる。被保険者女性の有配偶率はそれほど低くないものの、結婚した女性が持つ子どもの数が少ない。これは、いわゆる「2人目の壁」が厚いことを示唆している。
◆2010年度以後の被扶養者女性の推計TFRの低下分の6割弱は有配偶率の低下、4割強は有配偶出生率の低下による。2021年度時点の被扶養者女性の完結出生子ども数は1.9人弱とみられる。結婚して扶養に入った女性が持つ子どもの数が減少傾向であり、被扶養者女性にも「2人目の壁」が出現し始めている模様だ。
◆被用者保険の加入者につき、2017年度以後の全国の出生率の低下要因の6割程度は有配偶出生率の低下分である。政府には、被保険者女性・被扶養者女性それぞれでの「2人目の壁」の課題に対処し、誰もが希望するだけの子どもを持つことをかなえられるようにすることで、出生率を上向かせることが望まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
医療保険属性別(被保険者・被扶養者別)出生率の推計結果:2022年度版
健保組合は3年ぶり、協会けんぽは7年ぶりに被保険者出生率が低下
2024年05月29日
-
希望出生率を実現するために必要な政策
「夫婦とも正規雇用の共働き」実現による子育て世帯の所得増を目指せ
2022年11月29日
-
「L字カーブ」解消の経済効果と課題は?
男性の働き方改革を通じて女性に偏る家事・育児の負担の軽減を
2023年05月25日
-
「次元の異なる少子化対策」として何を実施すべきか
政策効果を明示した上で、財源や負担の「社会的合意」を目指せ
2023年02月27日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
-
石破新政権誕生、経済政策の注目点は?
デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営に期待
2024年10月03日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
石破新政権誕生、経済政策の注目点は?
デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営に期待
2024年10月03日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日