サマリー
◆日本の合計特殊出生率(TFR)を保険者別の被保険者と被扶養者に分けて分析し、少子化対策の効果を試算した。その結果、「妻が被保険者」の世帯に有効な両立支援・働き方改革と、「妻が被扶養者」の世帯に有効な在宅育児支援の導入は出生率引き上げの起爆剤となる。両者を合わせて、現状1.3程度のTFRを1.7程度まで引き上げることが期待される。他の施策と合わせれば、希望出生率1.8は実現可能な目標だ。出生率の改善につながる施策は、経済成長や年金給付の増加などを通じて広く国民に恩恵が及ぶ。国民全体が広く薄く負担する消費税や、社会保険料で財源を求めることの理解が得やすいだろう。
◆児童手当の所得制限撤廃など、比較的高所得の世帯への現金給付拡大による出生率引き上げ効果は不透明だ。比較的高所得の世帯への給付拡充を行うなら、少子化対策としてではなく、子どもを大事にする社会を作るための「純然たるこども・子育て支援策」と位置付けるべきだ。財源は、所得税の累進課税の強化や社会保険料の上限の引き上げなど、高所得世帯内での再分配を行うような形とすれば、国民の理解を得やすいだろう。
◆政府は、出生率や経済効果を明示した上で少子化対策やこども・子育て支援の具体策を提示し、国民的議論を経て財源や負担の社会的合意を目指すべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
希望出生率を実現するために必要な政策
「夫婦とも正規雇用の共働き」実現による子育て世帯の所得増を目指せ
2022年11月29日
-
出生率の引き上げには在宅育児への支援強化も必要
医療保険属性別(被保険者・被扶養者別)の合計特殊出生率の推計
2023年02月01日
-
第216回日本経済予測
少子化対策と金融政策の「次元」は変わるか①少子化対策、②賃上げ、③日銀金融政策、を検証
2023年02月20日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日