「次元の異なる少子化対策」として何を実施すべきか

政策効果を明示した上で、財源や負担の「社会的合意」を目指せ

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2023年02月27日

サマリー

◆日本の合計特殊出生率(TFR)を保険者別の被保険者と被扶養者に分けて分析し、少子化対策の効果を試算した。その結果、「妻が被保険者」の世帯に有効な両立支援・働き方改革と、「妻が被扶養者」の世帯に有効な在宅育児支援の導入は出生率引き上げの起爆剤となる。両者を合わせて、現状1.3程度のTFRを1.7程度まで引き上げることが期待される。他の施策と合わせれば、希望出生率1.8は実現可能な目標だ。出生率の改善につながる施策は、経済成長や年金給付の増加などを通じて広く国民に恩恵が及ぶ。国民全体が広く薄く負担する消費税や、社会保険料で財源を求めることの理解が得やすいだろう。

◆児童手当の所得制限撤廃など、比較的高所得の世帯への現金給付拡大による出生率引き上げ効果は不透明だ。比較的高所得の世帯への給付拡充を行うなら、少子化対策としてではなく、子どもを大事にする社会を作るための「純然たるこども・子育て支援策」と位置付けるべきだ。財源は、所得税の累進課税の強化や社会保険料の上限の引き上げなど、高所得世帯内での再分配を行うような形とすれば、国民の理解を得やすいだろう。

◆政府は、出生率や経済効果を明示した上で少子化対策やこども・子育て支援の具体策を提示し、国民的議論を経て財源や負担の社会的合意を目指すべきだ。

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