希望出生率を実現するために必要な政策

「夫婦とも正規雇用の共働き」実現による子育て世帯の所得増を目指せ

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2022年11月29日

サマリー

◆政府は1994年の「エンゼルプラン」策定以後、出生率の低下を問題として認識し、2015年からは「希望出生率1.8」を目標に掲げ少子化対策を行っている。だが、合計特殊出生率は2001年以後はおおむね1.3前後の低水準で推移し、足元では低下傾向にある。

◆2001年と2020年の合計特殊出生率は同じ1.33だが、この間、女性の仕事と育児の両立をめぐる環境は大きく変化している。2010年頃から、保育所や育休制度の整備など両立支援策が強化される中で、健康保険の被保険者女性の粗出生率は上昇した。正規雇用女性を中心に、子どもを産んでも仕事を続けやすくなり、女性が「仕事か子どもか」の二者択一を迫られる状況は改善してきた。一方で、被扶養者となった女性(のいる世帯)の粗出生率が低下しており、子どもを持ちにくくなってきている現実も直視する必要がある。

◆「希望出生率1.8」の実現には、希望する結婚・出産を阻む経済的要因を取り除く必要があり、①現金または現物の給付の拡充、②結婚や子育てを希望する世帯の所得の引き上げ、の2つの施策が考えられる。①について比較的優先度が高いのは、現状で支援が手薄になっている「3歳未満の在宅育児」に対する支援だろう。②については、結婚・出産を機に一度退職した女性を含め、「夫婦とも正規雇用での共働き」を実現させることが重要だ。男性の家庭活躍の推進に加え、柔軟な働き方の促進、同一労働同一賃金、職業訓練の充実などに取り組む必要がある。これらの政策をパッケージとして実行することができれば、合計特殊出生率は1.82程度まで上昇する可能性がある。

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