サマリー
◆世界動物保護協会(World Animal Protection)の動物保護指数(API)の評価を見ると、日本は2020年版でアニマルウェルフェアの法規制にかかる6項目のうち5項目が、アメリカ等を含む5カ国で、最下位となっている。特に畜産動物の保護等にいたっては最低のG評価である。
◆こうした現状に対して、日本では畜産に関するアニマルウェルフェアへの一般の関心は低いままであるばかりか、生産者や政府も国内規制において対応が必要なことを認識しながらも、厳しい規制の導入に対して二の足を踏んでいるように感じられる。
◆しかし、中長期的には、生産者として世界的な規制強化への流れを無視するわけにはいかない。また、食品企業にとっては今後予想される投資家サイドからの圧力の高まりへの対応が必要である。さらに、政府が推進する畜産物の輸出拡大や、訪日客に「食」をアピールするためにも、畜産のアニマルウェルフェア対応は欠かせないであろう。
◆消費者、生産者、食品企業に共通して言えるであろうことは、いずれもが家畜を苦しませたいわけでないということである。だからこそ、仮に一時的な多額投資の必要性がアニマルウェルフェアの向上を阻んでいるのであれば、国や自治体等はそのために必要な資金支援を十分に行うべきである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
なぜ今、「フェアトレード」に注目すべきなのか
~SDGsが重視される中、生産者に犠牲を強いるビジネスは継続せず~
2021年09月03日
-
なぜ、ブルーエコノミーに注目すべきなのか
~海洋の適度な利用により、地球環境の持続可能性を向上~
2021年04月20日
-
なぜ今、「ワンヘルス(One Health)」なのか
~人、動物、生態系の健康一体で、動物由来の感染症を防げ~
2021年03月04日
-
なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか
~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~
2021年02月03日
-
キャンプ×シェアで地方創生
~空いている土地をキャンプサイトに!~
2020年12月28日
-
プレジャーボートのシェアリングエコノミー
~ボートシェアで海に親しみ、海洋の諸課題に対してより関心を~
2020年10月29日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
-
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日