サマリー
◆「完全菜食主義者」と言われるヴィーガンを含むベジタリアンが増加しており、年平均増加率(1998年-2018年)は、アメリカ(中南米を含む)では3.9%、ヨーロッパでは2.6%となっている。
◆昨今の菜食主義の拡大の背景には、①以前からの健康志向、②アニマルウェルフェア(動物福祉)への配慮やクルエルティフリー(動物実験といった残酷な行為を行わない)を目指す方向への各国社会の変化、③畜産における温室効果ガスの排出が地球温暖化の一因とされることが認識されるようになった点が挙げられる。
◆これらに加え、「食」をめぐる情報が容易に入手できるようになったこともこの動きを加速させる要因となったと筆者は考える。特に、健康や家畜等の飼育、環境問題に関し、肉類を食すことのあり方を問う各種ドキュメンタリー作品は、視聴者にこれらを考える機会と一歩を踏み出すきっかけを与えることにつながっているとみられる。
◆今般の菜食ブームからの重要な示唆は、価値観の変化により、人々の行動が大きく変わり得るということである。健康、動物愛護、環境への意識の向上といった普遍性を有する価値観の変化はある程度、不可逆的なものである。こうした価値観の変化に、FoodTech等の技術的な進歩が加わって、人々の行動が変化しているのであるとすれば、菜食主義の広まりは長期的なトレンドになり得るのではなかろうか。
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