MaaS:移動のシェアで社会的課題を解決(後編)

~日本版MaaSが本格実施へ向かうも、安定した事業運営は可能か~

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2020年02月18日

  • 経済調査部 市川 拓也

サマリー

◆政府は成長戦略の中で「日本版MaaS」を推進している。「日本版MaaS」は大都市における交通の利便性向上だけでなく、地方における交通空白地域の交通網・物流網の確保や訪日外国人の移動の円滑化等も視野に入れている点に特徴がある。

◆2019年6月に国土交通省は日本版MaaSに関し、19の先行モデル事業を選定しており、各地で実証実験が行われている。なかでも、神奈川県川崎市・箱根町の実証実験は商業施設での購入者に無料バスのチケットが発行されるサービスや、飲食店等でのサブスクリプション活用といった通常のMaaS枠を超えた実験であり、その成果が注目される。

◆MaaSの日本での課題として挙げられるのは、住民の認知度の低さに加え、民間企業によるMaaSのオペレーションがビジネスとして成り立つのかという点である。しかし、そもそもMaaSの価値とは、交通機関の組み合わせから大きな付加価値を作り出すことではなく、その国や地域が抱える社会的課題の解決にこそ価値がある。人口減少が続き、地方で過疎化が進む日本において行政主導で社会的課題の解決を図っていくことも必要かもしれない。

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