欧州の「政治の季節」がクライマックスへ

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2017年03月22日

  • 児玉 卓

サマリー

オランダの下院選挙では、ルッテ首相率いる自由民主国民党が第一党の座を守り、同首相は極右・自由党の躍進を阻んだとして「勝利宣言」を行っている。しかし、第一党とは言え、与党は議席を減らし、自由党は議席を増やしている。しかもルッテ首相はにわかに移民に対する厳格な姿勢を打ち出すなど、自ら極右に寄り、その特徴を消す戦略をとっており、オランダ選挙をもって、ポピュリズム躍進への歯止めがかかったと見ることには慎重であるべきだろう。欧州における「政治の季節」は、4月に始まるフランス大統領選挙でクライマックスを迎えるが、同選挙は選挙民の「選択肢の少なさ」において、オランダ下院選挙よりも、Brexitを決めた英国の国民投票や米国の大統領選挙に近いと思われる。ロンドンの金持ちにぎゃふんと言わせてやりたいと思えば、EUが何たるかを知らずとも離脱に票を入れる。既得権の権化のように見えるヒラリー氏の大統領就任を嫌うのであれば、トランプ氏を推す他はない。一般に国民戦線のルペン氏の選挙勝利を阻む安全弁とみられることの多い、フランス大統領選挙における決選投票という仕組みが、選択肢の少なさゆえに、ルペン氏にかえって味方をする可能性を排除することはできない。トランプ政策の行方とともに、欧州政治への注視が怠れない状況が続こう。

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