サマリー
オランダの下院選挙では、ルッテ首相率いる自由民主国民党が第一党の座を守り、同首相は極右・自由党の躍進を阻んだとして「勝利宣言」を行っている。しかし、第一党とは言え、与党は議席を減らし、自由党は議席を増やしている。しかもルッテ首相はにわかに移民に対する厳格な姿勢を打ち出すなど、自ら極右に寄り、その特徴を消す戦略をとっており、オランダ選挙をもって、ポピュリズム躍進への歯止めがかかったと見ることには慎重であるべきだろう。欧州における「政治の季節」は、4月に始まるフランス大統領選挙でクライマックスを迎えるが、同選挙は選挙民の「選択肢の少なさ」において、オランダ下院選挙よりも、Brexitを決めた英国の国民投票や米国の大統領選挙に近いと思われる。ロンドンの金持ちにぎゃふんと言わせてやりたいと思えば、EUが何たるかを知らずとも離脱に票を入れる。既得権の権化のように見えるヒラリー氏の大統領就任を嫌うのであれば、トランプ氏を推す他はない。一般に国民戦線のルペン氏の選挙勝利を阻む安全弁とみられることの多い、フランス大統領選挙における決選投票という仕組みが、選択肢の少なさゆえに、ルペン氏にかえって味方をする可能性を排除することはできない。トランプ政策の行方とともに、欧州政治への注視が怠れない状況が続こう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:消費が減速するなか、経済安定は投資頼み
2017年03月17日
-
欧州経済見通し 英国がEU離脱を通告へ
一歩前進だが、引き続き不透明感は強い
2017年03月21日
-
米国経済見通し 財政を取り巻く課題は多い
トランプ大統領は予算案の骨子を発表も、税制改革案は先送り
2017年03月21日
-
日本経済見通し:「グレートローテーション」は持続するか?
①世界経済見通し、②銅価格、③米国通貨戦略に注目
2017年03月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日