サマリー
◆ユーロ圏経済は堅調な景気拡大が続いていると見込まれる。2016年末に製造業受注が急拡大し、企業景況感は2017年に入ってからも改善傾向にある。一方、2月の消費者物価上昇率は前年比+2.0%に加速したが、これが消費者マインドの悪化要因とはなっていない。ドラギECB総裁は3月9日の理事会後の記者会見で、ユーロ圏のデフレ懸念は概ねなくなり、緊急に追加緩和が必要な局面ではなくなったと明言した。ただし、追加緩和の可能性に関しては含みを残している。これは足下の物価上昇が主としてエネルギー価格の上昇によるもので、コア物価上昇率は低水準であることが一因である。また、さまざまな政治的な不透明要因が目前にあることも理由と考えられる。米国のトランプ大統領の保護主義的なスタンスがユーロ圏経済にどのような影響を及ぼすかに加え、英国がついにEUに離脱通告をする運びとなり、その交渉の行方も注目される。
◆英国のメイ首相は上下両院の承認を得て、3月29日にEUに離脱を通告する方針である。ここから2年間という期限で離脱交渉が始まるが、離脱交渉で具体的に何が話し合われるのか、どのように交渉が進められるのか、着地点がどうなるのか依然として分からない点が多い。交渉が難航し、けんか別れの形で英国がEUを離脱する可能性も否定できない。なお、英国の今後の景気動向が離脱交渉に影響を及ぼすことも予想される。国民投票でBrexitを選択したあとも英国景気は堅調に推移してきたが、ポンド安に伴う家計の購買力低下の影響が出始めてきたと見受けられる。英国景気の牽引役である個人消費が減速すれば、Brexitに懐疑的な意見が勢いを取り戻す展開も予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

