欧州経済見通し 英国がEU離脱を通告へ

一歩前進だが、引き続き不透明感は強い

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2017年03月21日

サマリー

◆ユーロ圏経済は堅調な景気拡大が続いていると見込まれる。2016年末に製造業受注が急拡大し、企業景況感は2017年に入ってからも改善傾向にある。一方、2月の消費者物価上昇率は前年比+2.0%に加速したが、これが消費者マインドの悪化要因とはなっていない。ドラギECB総裁は3月9日の理事会後の記者会見で、ユーロ圏のデフレ懸念は概ねなくなり、緊急に追加緩和が必要な局面ではなくなったと明言した。ただし、追加緩和の可能性に関しては含みを残している。これは足下の物価上昇が主としてエネルギー価格の上昇によるもので、コア物価上昇率は低水準であることが一因である。また、さまざまな政治的な不透明要因が目前にあることも理由と考えられる。米国のトランプ大統領の保護主義的なスタンスがユーロ圏経済にどのような影響を及ぼすかに加え、英国がついにEUに離脱通告をする運びとなり、その交渉の行方も注目される。


◆英国のメイ首相は上下両院の承認を得て、3月29日にEUに離脱を通告する方針である。ここから2年間という期限で離脱交渉が始まるが、離脱交渉で具体的に何が話し合われるのか、どのように交渉が進められるのか、着地点がどうなるのか依然として分からない点が多い。交渉が難航し、けんか別れの形で英国がEUを離脱する可能性も否定できない。なお、英国の今後の景気動向が離脱交渉に影響を及ぼすことも予想される。国民投票でBrexitを選択したあとも英国景気は堅調に推移してきたが、ポンド安に伴う家計の購買力低下の影響が出始めてきたと見受けられる。英国景気の牽引役である個人消費が減速すれば、Brexitに懐疑的な意見が勢いを取り戻す展開も予想される。

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