米国経済見通し 財政を取り巻く課題は多い

トランプ大統領は予算案の骨子を発表も、税制改革案は先送り

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2017年03月21日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆トランプ政権は2017年10月から始まる2018会計年度の予算案の骨子を発表した。今回の予算案では、毎年の予算審議によって予算権限が決定される裁量的経費の方針のみが示された。義務的経費や歳入も含めた正式な予算教書は5月に議会に提出される見込みとされている。市場などからの期待が大きい減税策の詳細は当面先送りされることになった。


◆財政に関しては2018年度予算以前に解決しなければならない課題がある。これまで延期されていた債務上限は3月16日から適用が再開された。また、2016年10月から始まっている2017年度の予算は4月28日を期限とする暫定予算となっている。期限までに暫定予算が延長されなければ、2013年10月のように連邦政府機関の一部閉鎖という事態が発生する。トランプ大統領就任以降、共和・民主両党は対立を深めており、調整は難航すると予想される。トランプ大統領の財政政策への期待はなおも根強いが、実現に向けた道のりは険しい。


◆足下の米国経済は総じて底堅い状況が続いている。個人消費にはやや停滞感が見られているものの、税還付の遅れという特殊要因が影響しており、雇用・所得環境は着実な改善が続いている。消費者マインドも明るさを増しており、先行きの個人消費は堅調に推移することが見込まれる。企業部門についても、生産などの実体面での改善に加えて、マインドが改善基調を強め、設備投資拡大に向けた環境は整いつつある。


◆他方で、トランプ政権による政策動向の不透明感が、先行きにおける最大のリスク要因であるという状況に変化はない。減税等の財政政策が期待通り実施されれば景気を押し上げる要因になるが、家計、企業のマインド改善の背景には、先行きの政策に対する期待感が含まれている。今後の政策運営が期待外れのものとなれば、マインドの悪化を通じて民間部門の経済活動に対して悪影響を与えると考えられる。

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