8月国際収支統計

輸入金額減少、第一次所得収支受取増加が黒字幅拡大要因に

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2016年10月11日

  • 齋藤 勉
  • 小林 俊介

サマリー

◆2016年8月の国際収支統計によると、経常収支は2兆8億円と、26ヶ月連続の黒字となった。季節調整値で見ると、経常収支は1兆9,757億円と29ヶ月連続の黒字となり、前月(7月:1兆4,478億円)から黒字幅が5,279億円拡大した。


◆8月には、前月に金額が大きく縮小していた「仲介貿易商品」が反動で増加したことによる輸出金額の増加と、円高に伴う輸入金額の減少が貿易収支の黒字幅拡大に寄与した。さらに、直接投資収益の受取が増加し、第一次所得収支の黒字幅も拡大したことが、経常収支の黒字幅拡大要因となった。一方、旅行収支受取額の減少は黒字幅縮小要因となった。


◆先行きの経常収支は、緩やかな黒字幅拡大を見込んでいる。足下で輸出数量に底入れの兆しが見られていることにより、輸出金額は緩やかな拡大基調が続くとみている。足下では原油価格が上昇しているものの、輸入金額の増加幅は小幅なものにとどまるだろう。貿易収支の黒字幅は緩やかながら拡大を続けると見込んでいる。一方、旅行収支の黒字幅は緩やかに縮小基調にあるなど、サービス収支の赤字幅が大幅に縮小するということは考えにくい。また、第一次所得収支の黒字幅は緩やかな縮小傾向が続いていたが、為替レートの変動が落ち着けば、所得収支は横ばい圏の動きに転じる公算が大きい。貿易収支黒字幅拡大が経常収支黒字幅の拡大要因となると見込んでいるものの、拡大ペースは極めて緩やかなものになる見込みである。

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