サマリー
◆日銀短観(2014年9月調査)では、消費税率引き上げ後に落ち込んだ景気の回復状況を確認するという意味から、企業の業況感の動向が特に重要である。大企業の足下の業況感は、製造業が小幅に改善したものの勢いに欠けており、非製造業が大きく悪化したことを踏まえると、景気の回復が遅れ気味であることを再確認させる結果となった。
◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+13%ptと前回(+12%pt)から改善し、市場コンセンサス(+10%pt)から上振れした。加工業種では、国内販売の低迷や輸出の伸び悩みの影響が懸念された「自動車」が2期ぶりに改善した。ただし、前回調査の悪化幅と比べて今回の改善幅が限定的であることから、引き続き慎重に見ていく必要があろう。堅調な国内外の設備投資需要を背景に、「はん用機械」と「生産用機械」の業況判断DIは堅調に推移している。
◆大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+13%ptと前回調査(+19%pt)から悪化し、市場コンセンサス(+17%pt)から下振れした。業種別に見ると、消費税増税後の反動減からの回復テンポが鈍く、天候不順の影響もあって「小売」が小幅ながらも2期連続で悪化した。家計関連の「宿泊・飲食サービス」と「対個人サービス」も弱く、天候不順の影響に加えて、家計の消費に対する慎重姿勢が窺える。
◆2014年度の大企業全産業の売上計画は、前年比+1.8%と前回調査から横ばい、経常利益計画は前年比▲3.0%と前回調査から上方修正された。経常利益は減益となる見通しであるが、昨年に大きく伸びた反動の影響が大きいこと、上期・下期ともに今回上方修正されたことを考慮すると、底堅い内容であると評価できる。
◆大企業全産業の2014年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年比+8.6%となり、市場コンセンサス(同+7.0%)を上回った。ここまで改善が遅れていた製造業で設備投資に対して積極的になる動きが引き続き確認できる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月全国消費者物価
エネルギー高対策の補助縮小や食料価格高騰が物価を押し上げ
2025年05月23日
-
AI時代の日本の人的資本形成(個人編)
AI時代を生き抜くキャリア自律に向けた戦略
2025年05月22日
-
2025年3月機械受注
民需(船電除く)は事前予想に反して2カ月連続で増加
2025年05月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日