トランプ大統領が6ヵ月で本当に戦争を止めたら金融市場はどうなる

ウクライナ停戦協議の3つのシナリオ

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  • 菅野 泰夫

サマリー

◆2025年1月20日、米大統領の就任式が行われ第2次トランプ政権が発足した。トランプ政権の優先課題として、ルビオ国務長官等が指摘しているのが、ロシア・ウクライナ間の停戦協定の締結である。トランプ大統領は、戦争終結の目標時期を就任後「24時間以内」から「6ヵ月以内」へと修正しつつも、プーチン大統領との早期首脳会談に意欲を表明するなど、和平実現への姿勢を示している。

◆現時点でトランプ政権下での実現可能性が高い戦争終結シナリオは、ウクライナ・ロシア担当特使のキース・ケロッグ氏らが提案する前線での非武装地帯設置と、ウクライナの当面のNATO(北大西洋条約機構)非加盟を条件とした暫定的な休戦合意である。このアプローチには、最終的な和平の実現のための協議が引き続き必要となるものの、現実的な妥協案といわれている。また即時の戦闘停止が可能との見方から、実効性ある解決策として期待されており、実現時には金融市場にポジティブな反応が予想される。

◆第二のシナリオは、ウクライナがトランプ政権の和平条件を受け入れないケースである。この場合、米欧からの支援停止または縮小によりロシアの軍事圧力が強まり、最終的にウクライナは政権交代、非武装化、中立国化、さらにはロシアによる実効支配地域の領土分割を受け入れざるを得ない事態に追い込まれる可能性がある。また第三のシナリオとして、トランプ政権の和平条件がロシア側で受け入れられないケースが考えられる。その場合、米国がウクライナ支援を拡大して継続することで、戦争の長期化シナリオが現実味を帯びてくる。

◆2025年2月24日でロシアによるウクライナ侵攻から丸3年となる。金融市場では欧州発の景気後退と新たな金融危機への警戒が根強いが、市場参加者の多くが、トランプ大統領の早期和平シナリオへの期待を膨らませており、その実現可能性が2025年のグローバル経済・金融市場の展開を左右する重要なカギを握っている。

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