2018年11月13日
サマリー
◆地域銀行では役務収益の重要性が増しているものの、それを支えるべきはずの預り資産の伸びが停滞しているように見受けられる。特に投資信託(以下投信)の預り資産残高はここ数年横ばいを続けている。
◆地域銀行で投信預り資産が積み上がらない理由として、金融商品取引法上のコンプライアンス体制の整備が追い付いていないこと、有価証券の販売に対するインセンティブの付与が不十分であることなどが考えられる。加えて、今後は投信販売会社の「共通KPI」が導入され、顧客本位の販売体制の一層の強化が求められる。
◆投信を含めた預り資産が大きい地域銀行の場合、預り資産ビジネスの収益性は一定の水準に収斂する傾向にあり、預り資産の積み上げは、役務取引等利益の絶対額を増加させる正攻法として考えられる。一方で、預り資産が相対的に小さくても収益性の高いコア顧客層の確保などを通じて収益性を高めるという選択肢も考えられるだろう。
◆地域銀行の預り資産が積み上がらない状況に鑑みると、大部分の地域銀行が生産性の低い“中途半端な販売体制”である可能性も否定できない。銀証連携の図り方やマス顧客層への対応のための人員配置、ミドル・バックの販売体制の再検討など、地域銀行グループ全体の証券ビジネスの体制を戦略的に考える必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
次世代銀行ビジネスモデルの担い手は?
~FinTechから見通す次世代銀行モデルの行方~
2018年10月05日
-
金融ジェロントロジーの観点で見る地域金融
超高齢社会における地域金融の対応
2018年11月07日
-
10年後に求められる地方銀行の姿に向けて
金融レポート、金融行政方針を踏まえた地方銀行の本質的な課題
2017年03月07日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日