2018年10月05日
サマリー
◆リーマン・ショック後、主要先進国の銀行のビジネスモデルの“単純化”、“単一化”が進んでいる状況が見られる。また、金融機関によるFinTechの活用が進む中、次世代の金融(銀行)ビジネスモデルの姿が“ぼんやり”と見えつつある。次世代の銀行ビジネスモデル(次世代モデル)は、銀行免許を有する既存の銀行が担うのであろうか。
◆次世代モデルを示す代表例としては、チャレンジャーバンクとBank as a Platform(BaaP)が挙げられる。これは、銀行の“システム(下の部分)”と銀行の“事業(上の部分)”の分離と言える。日米英で比較すると、既存の金融機関の持続可能性が危惧されている英国は競争政策を導入して明確に上下分離を目指している。他方で、既存の金融機関の体力が相対的に残っている米国は上下分離が進んでいない。
◆日本では、英国と同様に金融機関の持続可能性が懸念されており、分離が進む土壌はある。ただし、下の部分を意識している銀行においても、顧客接点をすべて放棄するのではなく、収益のコアとなる顧客との接点は維持する戦略を志向している。下の部分で稼げるようなコスト構造を模索しつつも、コア顧客の確保をしておくことが次世代銀行ビジネスモデルの担い手の条件であろう。
◆また、下の部分を放棄し、上の部分だけに専念する選択肢もある。上の部分に専念する場合、FAANG(Facebook、Amazon、Apple、Netflix、Google)といったプラットフォーマーに顧客を奪われないよう、顧客接点を徹底的に強化することが必要不可欠と言える。顧客接点を徹底的に強化するためにも、顧客のニーズの把握に努めることが求められよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(前編)
ステーブルコインの概要と現況
2025年05月19日
-
日本のウェルス・アセットマネジメントビジネスの方向性
~米欧と同じ付加価値を追求しているか~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
米国ウェルスマネジメント市場発展の経緯と今後の展望
~付加価値追求とインセンティブの調和~『大和総研調査季報』2025年新春号(Vol.57)掲載
2025年01月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日