ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(後編)

GENIUS法案は如何にして米ドルの支配的地位を補強するか

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サマリー

◆米国政府はステーブルコインの流通拡大を警戒し制限する方針から、米ドルの国際通貨としての地位を維持するためのツールとして規制の枠組みに取り入れ、統制をしつつ発展を推進する方針に転換した。ステーブルコインの概要と現況について述べた前編レポートを受けて、後編となる本レポートではステーブルコイン規制法案の狙い、概要及び影響を考察する。

◆第2次トランプ政権から始まった方針転換の背景には、民間のステーブルコインを統制し、実質的に米国のCBDC(中央銀行デジタル通貨)の代替として機能させることで、分散型金融の領域における米ドルの優位性及び米国の影響力を維持するという戦略があると推測される。

◆ステーブルコイン規制法案であるGENIUS法案は、「支払い用ステーブルコイン」について、法的な位置づけ、規制管轄、許可された発行体に対する準備資産管理・情報開示等の義務、国外発行されるステーブルコインに対する規制等を定めている。ステーブルコインに承認制度を導入して分別管理することで、ステーブルコインがもたらし得るリスクの削減を図り、米国政府による統制を確立し、米国式ルールの国外展開を促進する内容となっている。

◆ステーブルコイン規制法案が可決・施行された場合にもたらされ得る変化としては、①ステーブルコインの勢力図の変化、②米ドルの影響力拡大、③分散型金融の発展が挙げられよう。

◆今後導入される規制・監督体制が長期的な価値の安定に有効か否か、及び規制内容に沿った運用が技術的に実行可能か否かは慎重に見定めていく必要があろう。

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