銀行へのマイナス金利政策導入当初の影響

ポートフォリオ・リバランスの促進効果や資金需要の増加は限定的

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  • 菅谷 幸一

サマリー

◆本稿では、マイナス金利政策の導入による影響として、①銀行のポートフォリオ・リバランスの促進効果、②家計・企業の借入需要の変化、③貸出金利から見る銀行の収益性の低下がどの程度進んでいるのかについて、導入当初の状況を概観する。


◆マイナス金利政策の導入以降も、銀行の現預金(その大半は日銀当座預金)の増加が目立つ一方、よりリスク性の高い他の金融資産への資金流入は小幅に留まっている。証券運用では、国債から外国証券や投資信託等への投資の動きが幾分強まり、有価証券全体で4年振りに買い越しとなったが、ポートフォリオ・リバランスの促進効果は未だ弱い状況と見られる。


◆家計・企業の借入需要は、家計では住宅ローン、企業では中小企業向けを中心に強まっているものの、全体的には限定的な高まりに留まる。結果として、マイナス金利政策導入後、預金に比した貸出金の伸び悩みがより顕著となり、預貸率の低下・預貸ギャップの拡大が加速している。


◆貸出金利は、特に地域銀行において、マイナス金利政策の導入以降、低下ペースが一段と加速している。また、利率別貸出金構成を見ても、最も利率の低い範囲の貸出金が急増している。貸出金利に比べて預金金利の引き下げ幅は小さく、預貸金利鞘の縮小が一段と進んでいる様子が窺える。

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