2015年08月20日
サマリー
◆国内銀行の保有資産は増加傾向にあるものの、その内訳を見ると、異次元金融緩和以降、貸出金や有価証券といったリスク性資産の増加よりも現金預け金の増加が目立っている。国内銀行は、日銀の買いオペにより国債売却を進める一方、国債売却や預金等により流入する資金の多くを現金預け金の形で積み上げている状況と言える。
◆国内銀行の貸出金は、近年、金融緩和やアベノミクスを追い風に、地方銀行が牽引する形で増加傾向にあるものの、預金がそれを上回るペースで増加している。そのため、預貸ギャップの拡大および預貸率の低下が継続しており、資金余剰の状態が続いている。
◆地方銀行の保有資産は12年連続で増加している。近年、現金預け金の保有比率が高まっているものの、国内銀行全体に比べると、貸出金や有価証券の比率が高い。また、証券運用では、外国証券、株式のほか、その他有価証券(株式・債券・外国証券以外の有価証券(投資信託や流動化商品等))の比率が高まっており、運用先の多様化が進んでいるものと思われる。
◆地方銀行の貸出金は、他の業態を上回るペースで増加を続けている。これまでは、大・中堅企業向け、個人向け、地方公共団体等向けが貸出金増加の中心となっていたが、直近では、中小企業向けが最も増加に寄与した。しかし、構成比率を見ると、中小企業向けが貸出金ポートフォリオの中心を占めているものの、比率は依然として低下基調にある。中小企業向けの比率低下は、貸出金全体の収益性低下につながっている可能性が考えられる。
◆資金利益は、貸出金利息の減少を主因に、4年連続で減少している。厳しい競争状況や超低金利環境を背景に、貸出業務の収益性低下に歯止めがかかっていない状況と言える。一方、有価証券利息配当金の資金運用収益に占める割合が上昇しており、その存在感が徐々に高まっている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
銀行へのマイナス金利政策導入当初の影響
ポートフォリオ・リバランスの促進効果や資金需要の増加は限定的
2016年07月28日
-
銀行に及ぶマイナス金利導入の影響
リスク性資産の増加・運用先の多様化が期待されるものの、収益性に一層の下方圧力が加わる懸念
2016年02月26日
-
地方銀行が担う"貯蓄から投資へ"の現状
~都道府県別の家計の有価証券保有状況と地方銀行の対応~
2014年08月29日
-
地方銀行の資産運用の動向と今後の課題
~現状の金融政策とその波及効果が地方銀行に及ぼす影響は?~
2014年11月06日
-
地方創生において地方銀行に求められる役割と課題
~地方の特性に応じた地方活性化に向けた地方銀行の役割とは~『大和総研調査季報』 2015年新春号(Vol.17)掲載
2015年03月02日
同じカテゴリの最新レポート
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
地方銀行の越境再編
その土台にある地域経済圏の再構築
2025年07月11日
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(後編)
GENIUS法案は如何にして米ドルの支配的地位を補強するか
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日