2015年03月20日
サマリー
◆コンピュータの計算処理能力、記憶容量、無線を含めた情報通信網の拡大・高速化や端末の小型化といったITの進化が続いている。IoTやビッグデータといったITを活用したコンセプトは、これまでのビジネスを変革する可能性を秘めており、さまざまな産業分野での応用が期待されている。
◆米国のIT投資額は2012年で約4,426億ドルであり、民間企業設備投資に占める割合は約39%に及ぶ。米国政府もITを活用することを前提とした支援策を打ち出している。一方、日本のIT投資額は2012年で約16兆円であり、堅調ではあるものの伸び悩んでいる。民間企業資本ストックに占めるITストックの比率は、1995年当時は日米ともに約1.9%で同じ程度の水準であったが、その後の米国の躍進によって2012年には日米で2倍に開いている。
◆米国での1990年代後半以降の積極的なIT投資は、米国経済全体の労働生産性向上に寄与し、特にIT利用側である非製造業の産業分野における労働生産性上昇への貢献があったとされる。米国はIT投資によって新たな付加価値を生み出す姿勢であるのに対して、日本はIT投資を業務効率化やコスト削減を主な達成目標としてきたことにより、米国ほどIT投資が労働生産性上昇に寄与してこなかった可能性がある。
◆国は日本の「稼ぐ力」の強化を目指しており、経済成長の柱のひとつとして、ITを活用した付加価値の向上を目標としている。具体的な施策として、大きな付加価値シェアを占めながら生産性が低いとされる産業へ、ITを活用することによる付加価値向上を促進する取組みなどを推進している。日本においても、ビジネス拡大等の目的を伴った積極的なIT投資は、売上向上などの効果がある可能性が示されている。
◆一方で、日本ではIT技術者がIT利用側でなくIT提供側に偏っており、CIO設置企業が相対的に少ないことから、ITを有効に活用するためのIT人材確保や組織体制の整備が十分にできていない可能性がある。IoT時代の動きを的確につかみ、日本の「稼ぐ力」を高めるためには、IT投資の量と質を一層充実させていくことが求められよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本の農業の効率性改善の鍵はIT
IoT時代のIT投資と「稼ぐ力」:農業分野
2015年04月13日
-
スマートシティの可能性
求められる家庭部門・中小事業者のスマート化
2015年03月24日
-
郊外・環境配慮型データセンターの取組み
2014年05月27日
-
求められるサイバーセキュリティの人材育成
2014年12月24日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
主要国経済Outlook 2024年11月号(No.456)
2024年10月24日
-
最高路線価で読み解く都市の発展史
〜コロナ後の城下町2.0 まちづくり〜『大和総研調査季報』2024年秋季号(Vol.56)掲載
2024年10月24日
-
消費本格回復のカギは高所得世帯と70 ~ 80 年代生まれ
『大和総研調査季報』2024年秋季号(Vol.56)掲載
2024年10月24日
-
日本のウェルスマネジメント市場のポテンシャルを探る
~大和総研「日本経済中期予測」に基づく将来推計~『大和総研調査季報』2024年秋季号(Vol.56)掲載
2024年10月24日
-
英国労働党のハネムーンは苦い思い出に
2024年10月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第222回日本経済予測(改訂版)
不安定化する外部環境の下で日本経済の成長は続くか①米国景気・円高、②金利上昇リスク、③少子化対策、を検証
2024年09月09日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
FOMC 0.50%ptの利下げを決定
利下げ幅の判断に関しては曖昧さが残る
2024年09月19日
-
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
-
超富裕層に税率22.5%のミニマムタックスを導入
「1億円の壁」問題による金融所得一律増税は回避へ
2022年12月22日
第222回日本経済予測(改訂版)
不安定化する外部環境の下で日本経済の成長は続くか①米国景気・円高、②金利上昇リスク、③少子化対策、を検証
2024年09月09日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
FOMC 0.50%ptの利下げを決定
利下げ幅の判断に関しては曖昧さが残る
2024年09月19日
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
超富裕層に税率22.5%のミニマムタックスを導入
「1億円の壁」問題による金融所得一律増税は回避へ
2022年12月22日