2015年03月24日
サマリー
◆現在の民生部門(家庭部門と業務部門)のエネルギー消費量とCO2排出量は、全体の1/3を占めるようになっている。エネルギー消費や燃費がコストに直結する産業部門や運輸部門と違って、民生部門は対策の投資効果が測りにくく、エネルギー使用に関する制御がしにくい。ITを活用してQOL(生活の質)を下げずに、エネルギー、交通インフラ、医療、防犯・防災など、社会をスマートにしようとするのがスマートシティである。
◆民生部門の省エネポテンシャルは高いが、省エネに関する政府の支援策の認知度が低いこと(情報不足)、全体に占めるエネルギーコストの比率が小さいため省エネメリットを感じにくいこと(インセンティブ不足)などが、省エネが進まない壁といえよう。スマート化についても同様の壁があると考えられる。
◆情報不足対策としては、診断サービスや助成金などの支援措置の認知度を上げるために、既存の支援措置と連携して参加候補者に接触するためのチャネルを増やすと共に、「見える化」で効果を測ることができるようにすることが有効と考えられる。また、日本全体にスマートシティを広げるためには、中古住宅や中古ビルを対象とする取り組みも必要であり、先ごろ開始された「省エネ住宅ポイント制度」は、申請者などに省エネに関する情報を提供する良い機会と考えられる。
◆インセンティブ不足対策には、エネルギー費用の削減という直接的な便益(EB:Energy Benefits)だけでなく、健康的・快適な生活(QOLの向上)、BCP・BLCP強化、ビジネスチャンス拡大(経済的波及効果)など省エネや低炭素化による間接的便益NEB(Non-Energy Benefits)も明確化することが求められよう。
◆スマートシティの評価方法に関する国際標準化活動を主導し、エネルギー分野以外でもデータ活用を進めることで、日本のスマートシティが水平展開されることが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本の農業の効率性改善の鍵はIT
IoT時代のIT投資と「稼ぐ力」:農業分野
2015年04月13日
-
見て、聞いて、ちょっと未来を考える 第3回
スマートな横串~東京工業大学・環境エネルギーイノベーション棟~
2014年01月14日
-
IoT時代のIT投資と「稼ぐ力」
2015年03月20日
-
家庭部門の低炭素化
電力使用量削減の新たなステージへ
2015年02月19日
-
基礎自治体への期待と不安 第5回
スマートコミュニティ:持続可能な都市
2014年08月15日
同じカテゴリの最新レポート
-
東証が求めるIR体制の整備に必要な視点
財務情報とサステナビリティ情報を統合的に伝える体制の整備を
2025年04月28日
-
サステナビリティ課題への関心の低下で懸念されるシステムレベルリスク
サステナビリティ課題と金融、経済の相互関係
2025年04月21日
-
削減貢献量は低炭素ソリューションの優位性を訴求するための有用な指標となるか
注目されるWBCSDのガイダンスを踏まえて
2025年04月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日