2023年10月06日
サマリー
◆2023年3月末決算から、有価証券報告書には新たに「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄が追加された。本稿では機械学習の手法(構造的トピックモデル)を用いて、700社の有価証券報告書を対象に記述内容のトピック(テーマ)の分布を可視化した。
◆サステナビリティ開示初年度の各企業の対応は、期待通り、人的資本と環境関連の開示に重心が置かれたものであった。また、一部業種では自社の業態や企業価値への影響を踏まえてより重要性の高い項目に比重を置いた開示が確認された。総じて、新設された開示制度の狙いに応えた企業側の対応があったと言えそうだ。
◆今後は、この開示情報を誰がどのように利用したのかを探ることが課題となる。ESG投資家が利用し、世界のESG投資を日本に呼び込むうえで役立つ開示であったのかを明らかにすることが期待される。開示政策により上場企業に課せられた新たな開示事務負担を上回るベネフィットが創出されているか否かを検証する必要があろう。
◆開示によって、世界のESG資金が日本に向かうことで、資金調達の条件改善や、株価形成への好影響が観察されれば、企業側にとっても一層の良質な情報開示に向けて取り組みを加速する動機となるはずだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
半減した米国のESG投資残高
SEC規制で自称ESG投資が減少したのか、もともと幻だったのか
2022年12月29日
-
開示府令の改正が公布・施行
サステナビリティ情報開示などに関する具体的な考え方・対応を解説
2023年02月07日
-
銀行業の統合報告書等をテキストマイニングで読み解く
ESGやDXなどのホットトピックを可視化
2022年07月21日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日