機械学習を用いた有価証券報告書のサステナビリティ情報の可視化

構造的トピックモデル(Structural Topic Model)による記述情報把握

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  • 経済調査部 研究員 中田 理惠
  • 政策調査部 主席研究員 鈴木 裕

サマリー

◆2023年3月末決算から、有価証券報告書には新たに「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄が追加された。本稿では機械学習の手法(構造的トピックモデル)を用いて、700社の有価証券報告書を対象に記述内容のトピック(テーマ)の分布を可視化した。

◆サステナビリティ開示初年度の各企業の対応は、期待通り、人的資本と環境関連の開示に重心が置かれたものであった。また、一部業種では自社の業態や企業価値への影響を踏まえてより重要性の高い項目に比重を置いた開示が確認された。総じて、新設された開示制度の狙いに応えた企業側の対応があったと言えそうだ。

◆今後は、この開示情報を誰がどのように利用したのかを探ることが課題となる。ESG投資家が利用し、世界のESG投資を日本に呼び込むうえで役立つ開示であったのかを明らかにすることが期待される。開示政策により上場企業に課せられた新たな開示事務負担を上回るベネフィットが創出されているか否かを検証する必要があろう。

◆開示によって、世界のESG資金が日本に向かうことで、資金調達の条件改善や、株価形成への好影響が観察されれば、企業側にとっても一層の良質な情報開示に向けて取り組みを加速する動機となるはずだ。

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