2024年07月23日
サマリー
◆企業が人権尊重の責任を果たしているかについて、ステークホルダーの視線が厳しさを増し続ける中で、企業の取組みをステークホルダーに伝える情報開示の重要性が高まっている。2015年に策定された「国連指導原則報告フレームワーク(UN Guiding Principles Reporting Framework)」(以下、「UNGPs報告フレームワーク」)は、人権尊重に関する情報開示の向上において重要な役割を果たすと考えられる。
◆UNGPs報告フレームワークは、人権に関する情報開示のための包括的なガイダンスである。企業にとっては、情報開示にとどまらず、取組みを推進する上でも重要な参照点となると考えられる。ステークホルダーにとっては、企業間の比較が容易になること、エンゲージメントの実効性が高まること等が期待される。ただし、これらの期待が実現されるためには、企業の間で利用が普及する必要がある。
◆UNGPs報告フレームワークを利用した情報開示を行っている日本企業の数は未だ少ない。今後、人権に関する情報開示の拡充が望まれる。取組みにおいては、企業活動から生じる人権への負の影響を防止・軽減させ、負の影響を受けた人々に救済へのアクセスを提供できることが重要である。情報開示の前提として、企業にはUNGPsの考え方や内容に対する理解を深め、人権を尊重する責任を果たすための実践を深化・加速させることが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「ビジネスと人権」をめぐる日本企業の対応
人権デュー・ディリジェンスの実施はどこまで進んでいるか
2024年02月14日
-
人権尊重に関する企業評価と日本企業
Corporate Human Rights Benchmarkからみる現状と課題
2024年06月12日
-
LGBTQ+の人権をめぐる国連の活動の展開と日本企業への示唆
「国連LGBTI企業行動基準」を参照し国際的に通用する取組みを
2023年06月05日
-
人権尊重における機関投資家の役割
企業の取組みを促進する可能性への期待と課題
2024年05月01日
同じカテゴリの最新レポート
-
ISSBがIFRS S2の改正案を公表
温室効果ガス排出量の測定・開示に関する要件を一部緩和
2025年05月16日
-
年金基金のESG投資を実質禁止へ:米労働省
バイデン政権時代に制定されたESG投資促進の規則は廃止へ
2025年05月14日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日