2024年05月01日
サマリー
◆2011年の「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護、尊重及び救済』枠組実施のために」(以下、「UNGPs」と表記)の承認以降、「ビジネスと人権」をめぐる議論は大幅に深化した。この間の議論の展開からは、機関投資家を含む金融機関の人権尊重責任に対する認識の高まりが読み取れる。
◆そのような状況の中、責任投資原則(PRI)は「投資家が人権を尊重するべき理由およびその方法」と題した報告書を公表した。機関投資家に求められる責任は、投資先企業に対して影響力を行使することである。行使できる影響力が不十分である場合は、影響力を高める方法を追求することが期待される。
◆影響力を高める方法の1つに、協働エンゲージメントがある。PRIは、2022年より社会問題と人権に関する協働スチュワードシップ・イニシアティブ「Advance」を開始した。日本の機関投資家も署名しており、一部は協働エンゲージメントにも参加している。
◆機関投資家の影響力の向上は、企業の人権尊重を促す可能性を持つ。ただし、日本の企業と機関投資家の双方にとって、UNGPsに対する理解が課題である。機関投資家にとっては、人権DDを含めた人権尊重の取組みを進めることに加えて、取組みを国際的に通用する内容や水準のものとすることも重要な課題である。これらの課題を乗り越えることは、人権尊重における機関投資家の役割の最大化に貢献すると考えられる。
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