2021年12月22日
サマリー
◆IFRS財団は2021年11月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を公表した。また、2022年6月までに、既存の開示基準の設定機関であるVRF(Value Reporting Foundation、IIRC(国際統合報告評議会)とSASB(サステナビリティ会計基準審議会)が合併して2021年6月に設立)、CDSB(気候変動開示基準委員会、CDPが事務局を務める)をISSBに統合することも公表した。
◆ISSB設立公表の際に、ワーキング・グループであるTRWGからISSBの今後の検討の方向性を示すと考えられる二つのプロトタイプが公表された。「サステナビリティ関連財務情報開示の一般要求事項プロトタイプ」では、企業がサステナビリティ情報を開示するための基本的な方法、内容、考え方を定めている。
◆「気候関連開示プロトタイプ」では、気候関連の物理的リスク、移行リスク、機会について、TCFD提言と同様に、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」という四つの観点で開示が求められている。ただし、TCFD提言の開示事項と比較しても、具体的かつ詳細な開示が求められている。
◆今後、わが国でもISSBの基準を念頭に置いた上で更なるサステナビリティ情報の開示が求められることが想定される。企業はTCFD提言への対応を着実に進めていき、その延長線上にあるISSBの基準に備えつつ、気候変動以外のサステナビリティテーマにも対象範囲を広げていくことが望ましいと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
TCFDが基準の一部改訂とガイダンスを公表
気候関連の指標、目標、低炭素経済への移行計画に係る開示の解説
2021年12月10日
-
乱立するESG情報の開示基準とその現状
ESGに積極的な企業は主要な各種基準の特徴や違いを把握すべき
2021年01月12日
-
ESG情報の開示基準は統一へ向かうのか
開示基準設定機関の協調、IFRSでの検討、各国・地域での対応が進む
2021年02月05日
-
改訂CGコードを踏まえたサステナビリティに関する開示
パブリック・コメントへの回答から得られる示唆
2021年06月23日
-
企業のサステナビリティ情報開示の義務化に向けた検討が開始か
TCFDに基づく気候関連情報などが有報等で求められる可能性も?
2021年06月30日
同じカテゴリの最新レポート
-
GPIFのESG指数投資削減に求められる説明責任
投資先企業の信任を失えば「市場の持続可能性向上」は実現不可能
2025年10月16日
-
デジタルMRVが変えるカーボンクレジットの品質評価
炭素価値と非炭素価値を統合する、多面的な品質評価の必要性
2025年10月15日
-
生成AIを用いた人的資本スコア算出の試み
有価証券報告書から人的資本開示を定量的に評価する手法を開発
2025年10月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日