2021年02月05日
サマリー
◆近年、企業によるESG への取り組みを評価する上で重要なESG 情報を開示するための基準が乱立していることへの問題意識が高まっている。実際、基準設定機関の共同声明やIFRS 財団によるサステナビリティ報告基準設定の提案など、基準の統一への動きが見られる。
◆本稿は、二本立てシリーズの二本目である。前回は主要なESG情報開示基準の概要・違いを整理し、対応のポイントを示したが、今回は後編として、複数のESG情報開示基準の統一・協調に向けた動きやIFRS財団のような会計基準設定機関における検討状況、国・地域ごとの対応についてまとめる。その上で、今後の重要なポイントを展望する。
◆ESG情報開示基準の設定機関同士は必ずしも対立しているのではなく、各機関同士で協調が行われている。例えば、2020年には、包括的な企業報告に向けた共同声明を公表し、各基準の開示要件に沿った開示をサポートする共通セット・ガイダンスを提供することの重要性や、IFRS等の会計基準との組み合わせの可能性について言及している。IFRS財団側も同年に、既存のESG情報開示基準を踏まえ、サステナビリティ報告に関する基準の開発に関する協議文書を公表している。
◆国・地域ごとの動きとしては、2014年に公表された非財務情報の開示に係る指令の改訂が予定されているEUやバイデン大統領の就任によってESGに関する政策の策定が見込まれる米国、カーボンニュートラルに向けた政策の具体化が期待される日本など、国際的にESG情報の開示が進むと考えられる。これらの国・地域では既存のESG情報開示基準を参考に開示拡充の検討が行われている。
◆各機関等はESG情報開示基準、財務情報に関する会計基準、各国・地域の法制度が相互に補完しあうことを図って、お互いの動向を踏まえた検討を行っている。企業にとって重要なのは、こうした状況を把握し、自社のESG情報を開示する意義や目的の整理しておくことであろう。
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