乱立するESG情報の開示基準とその現状

ESGに積極的な企業は主要な各種基準の特徴や違いを把握すべき

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  • 金融調査部 研究員 藤野 大輝
  • リサーチ業務部 大和 敦

サマリー

◆近年、企業によるESGへの取り組みを評価する上で重要なESG情報を開示するための基準が乱立していることへの問題意識が高まっている。実際、基準設定機関の共同声明やIFRS財団によるサステナビリティ報告基準設定の提案など、基準の統一への動きが見られる。

◆本稿は、二本立ての構成となっている。まず、今回は前編として、主要なESG情報開示基準の概要・違いを整理しつつ、企業や投資家がどのように異なる基準に対応すべきかのポイントを示す。次回のレポートでは、複数の基準の統合や協調に向けた様々な動きや今後の展望などをまとめる。

◆ESG情報の主要な開示基準は、その目的によって開示対象とする分野、原則主義か細則主義か、想定するステークホルダー、開示チャネル、従うべき原則、開示項目などが異なる。中でも、マテリアリティ(重要性)について、各基準が「環境・社会問題による企業に対する影響の重要性」と「企業による環境・社会への影響の重要性」のどちらに重きを置いているのかを把握することは、基準を理解する上で非常に肝要である。

◆ESG情報の主要な開示基準に準拠・参照する企業は、国際的にも、わが国においても、増加傾向にある。わが国では企業に対して環境・社会問題に関する情報の開示は明確には義務付けられていないが、開示の増加傾向を踏まえれば、なるべく積極的に基準に沿った開示を行っていくことが期待される。企業が開示基準へ準拠・参照する上では、自社のESG情報の開示目的と各基準の目的・特徴を照らし合わせた上で、開示のためのガバナンス体制を構築することが求められよう。

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