サマリー
◆本稿では、世帯数の変化等をもとに、今後10年の年齢階級別にみた家計金融資産分布の動向を試算した。その結果、①後期高齢者が保有する金融資産残高が急速に増える点、②徐々に団塊ジュニア世代の存在感が高まる点、③中若年層の存在感はより小さくなる点が示された。
◆世帯数の他に金融資産分布に影響を与え得る主な論点としては、①高齢者の実質的な年金受給額の低下と就労促進、②「相続人の高齢化」を背景とした高齢者内での資産循環、③現役層における賃金カーブのフラット化、負債(住宅ローン)保有の増加、若年層の投資参入等が挙げられる。
◆75歳以上による金融資産保有の増加が進むため、認知症対応を含む「高齢者対応」が急務となる。また、団塊ジュニア世代が高齢層になる頃には、高齢者の就労状況が多様になること等が予想される中、資産のリスク管理も多様になろう。そうした点から、それぞれの状況に応じた顧客へのファイナンシャル・アドバイスが付加価値として重要になるだろう。中若年層全体が保有する金融資産額が縮小する中、既に導入が進んでいるテクノロジーを利用した金融サービスの質の向上により、顧客の獲得率を上げることが求められよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
スマホ証券が育む若年層の資産形成と今後の課題
インターネット証券取引開始から25年後の金融DXの新潮流
2021年08月10日
-
70歳就業確保の努力義務化と今後の課題
健康状態に配慮した環境整備や就業意欲の維持・向上が重要に
2021年04月15日
-
ライフサイクルで紐解く、「貯蓄から資産形成へ」の推進策
『大和総研調査季報』 2021年新春号(Vol.41)掲載
2021年01月13日
-
顧客満足度を高める金融サービスとは
対面銀行・証券では商品購入後の適切なフォローアップがカギ
2021年08月11日
同じカテゴリの最新レポート
-
投信運用広がるDC、時価上昇で資産額増加
元本確保型商品100%運用の加入者は2割強、分散投資の促進が課題
2025年11月14日
-
ISSが2026年以降の助言基準を公表
多様性基準の引き上げ、支配株主がいる会社に過半数の社外取締役を求める助言基準案について意見募集中
2025年11月06日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

