今後10年の家計金融資産分布と次世代金融ビジネスへの示唆

重要度が増す後期高齢者対応と団塊ジュニアへのアプローチ

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2021年09月22日

  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智

サマリー

◆本稿では、世帯数の変化等をもとに、今後10年の年齢階級別にみた家計金融資産分布の動向を試算した。その結果、①後期高齢者が保有する金融資産残高が急速に増える点、②徐々に団塊ジュニア世代の存在感が高まる点、③中若年層の存在感はより小さくなる点が示された。

◆世帯数の他に金融資産分布に影響を与え得る主な論点としては、①高齢者の実質的な年金受給額の低下と就労促進、②「相続人の高齢化」を背景とした高齢者内での資産循環、③現役層における賃金カーブのフラット化、負債(住宅ローン)保有の増加、若年層の投資参入等が挙げられる。

◆75歳以上による金融資産保有の増加が進むため、認知症対応を含む「高齢者対応」が急務となる。また、団塊ジュニア世代が高齢層になる頃には、高齢者の就労状況が多様になること等が予想される中、資産のリスク管理も多様になろう。そうした点から、それぞれの状況に応じた顧客へのファイナンシャル・アドバイスが付加価値として重要になるだろう。中若年層全体が保有する金融資産額が縮小する中、既に導入が進んでいるテクノロジーを利用した金融サービスの質の向上により、顧客の獲得率を上げることが求められよう。

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