70歳就業確保の努力義務化と今後の課題

健康状態に配慮した環境整備や就業意欲の維持・向上が重要に

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2021年04月15日

サマリー

◆2021年4月1日の改正高年齢者雇用安定法の施行により、従業員に対する70歳までの就業確保措置を講じることが事業主の努力義務となった。この措置の導入推進は、政府が60歳以上定年制や65歳までの雇用確保措置の導入を推し進めてきた過程の延長線上にあるものの、年金の支給開始年齢の引き上げを背景にしていない点や雇用に依らない就業確保策が認められている点に相違がある。

◆65歳までの雇用維持確保措置が普及した際の経験に鑑みれば、70歳までの就業確保措置の導入が進む過程では、65~69歳の就業率が上昇したり、失業率が低下したりする公算が大きい。就業者の中では非正規雇用者が増加しよう。ただし、同措置が努力義務にとどまり、また措置の対象者を限定できることを勘案すると、そうした変化は当面緩やかなペースにとどまるとみられる。

◆60歳代後半の就労拡大には課題も多い。高年齢者は現役世代に比べて感覚機能や能力、体力が低下する傾向にあり、個人差も大きい。職場環境の整備や、各人の健康状態に見合った柔軟な働き方が定着することが肝要だ。また、継続雇用下の処遇悪化が高年齢者の就労意欲を押し下げてきた面があり、同一労働同一賃金の徹底や成果に応じた賃金水準の見直しなどの対策が必要になりそうだ。

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