ライフサイクルで紐解く、「貯蓄から資産形成へ」の推進策

『大和総研調査季報』 2021年新春号(Vol.41)掲載

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  • 坂口 純也
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

本稿では、家計によるリスク性資産の保有について、高齢層・中年層・若年層と年齢層の違いに着目してその要因を分析した。まず、それぞれの年齢層に特徴的な資産形成上の論点は、①長生きリスクに備える運用が求められつつも認知機能の低下に注意が必要な高齢層、②純金融資産がプラスに転じ、相続によって金融資産を継承する中年層、③資産形成意欲が高く、デジタル・フレンドリーな若年層——と整理できた。

日本証券業協会「証券投資に関する全国調査(個人調査)」の匿名個票データを用いて、リスク性資産の保有要因を分析すると、①高齢層は証券会社に対するイメージや地域、②若・中年層は金融教育や税制優遇措置が大きな要因となっていた。

これらの分析結果は、資産形成を促進するうえで年齢層別の特性を踏まえて施策を行う必要性を示唆している。具体的には、高齢層に対しては金融ジェロントロジーの知見を活かすことによる顧客本位の業務運営の徹底が求められよう。また、若・中年層に対しては、税制優遇措置のより一層の周知や、証券投資に関する知識の学習機会を官民で作り上げることが望まれる。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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