◆2015年10月、TPP交渉は大筋合意に至った。これを受け、大和総研ではTPPがアジアにもたらす影響について2回に分けてレポートにまとめた。第1回(概要編)では、アジアにおけるTPPの位置づけに焦点を当てた。本稿は第2回(各国編)で、TPPがマレーシア、ベトナム、タイに及ぼす影響を紹介する。
◆マレーシアは、難航する米国とのFTA交渉と2020年までの先進国という目標を背景に、TPP交渉に参加している。繊維製品などの素材と機械類といった競争力のある品目で米国市場を開拓したい。マレー系を優遇するブミプトラ政策から、国有企業や政府調達の分野の開放には消極的だったが、TPP交渉に臨むことでこれらの分野に切込みを入れる意欲を見せた。
◆ベトナムもマレーシアと同様に米国市場の取り込みを大きな目的としている。米国への繊維製品輸出により、非参加国である中国の米国向け輸出シェアを奪いたい考え。一方で、域内調達を基本とする繊維製品の原糸原則は課題である。また、サービス分野の外資規制緩和や国有企業への優遇廃止など、国内改革のために大きく舵を切った分野もある。
◆タイは大筋合意以降、TPP参加への関心を示し始めたが、これまでの動きは政府内に研究会を組成するに留まり、未だ態度は明確ではない。タイのTPP参加は、個別に締結してきた二国間FTAを束ねる共通の通商ルールが利用可能となる点、対米輸出を伸ばす機会となり得るといった点で、タイに進出する日系企業にもメリットがあろう。一方、参加に向けた大きな課題は、農畜産業や医薬品産業を中心とした強力な反対勢力を説得できるかどうか。政治手腕が問われるが、決断までに残された時間はそう多くはない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
地域で影響を増す外国人の社会増減
コロナ禍後の地域の人口動態
2025年07月24日
-
生成AI利活用に関する技術・サービスの動向
基盤モデルなどの最新動向、および全体像・自社事例を解説
2024年07月01日
-
コロナ禍を踏まえた人口動向
出生動向と若年女性人口の移動から見た地方圏人口の今後
2024年03月28日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
よく読まれているコンサルティングレポート
-
アクティビスト投資家の近時動向(2026年4月)
「変質」しつつあるアクティビスト投資家。「対話」から「交渉」に。
2026年04月09日
-
なぜ中国企業は中期経営計画を開示しないのか
—制度・市場・経営環境から読み解く、中国企業の情報開示メカニズム—
2026年05月22日
-
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
-
非財務情報は企業価値に寄与するか
非財務情報(人的資本・ガバナンス)を用いた企業価値への影響に係る定量的検証
2026年04月03日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2025年9月版)
「同意なき買収」時代における買収対応方針の効果と限界
2025年09月24日
アクティビスト投資家の近時動向(2026年4月)
「変質」しつつあるアクティビスト投資家。「対話」から「交渉」に。
2026年04月09日
なぜ中国企業は中期経営計画を開示しないのか
—制度・市場・経営環境から読み解く、中国企業の情報開示メカニズム—
2026年05月22日
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
非財務情報は企業価値に寄与するか
非財務情報(人的資本・ガバナンス)を用いた企業価値への影響に係る定量的検証
2026年04月03日
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2025年9月版)
「同意なき買収」時代における買収対応方針の効果と限界
2025年09月24日

