インドネシアの首都ジャカルタは、その交通渋滞のひどさで悪名高い。閑散時には10分で通過できる地点が、渋滞時には1時間を費やすという現地の報告もある。昨年ジャカルタに出張した際に市内から郊外のスカルノ-ハッタ空港へ向かうときも、空いていれば30分ほどの道のりに過ぎないのだが、金曜夜の混雑時とあって、離陸時刻の4時間ほど前にはホテルを出発するのがよいと在住者から助言を受けた。実際にタクシーに乗ってみると、早朝には市内中心部を抜けるまでほんの10分ほどだったものが、このときには一時間半ほどを費やし、現地情報の大切さを痛感した記憶がある。では、ジャカルタ周辺の渋滞がどれだけひどいのか、ここでは、高速道路の交通量を基にして見てみたい。

表からわかる通り、ジャカルタ中心部とスカルノ- ハッタ空港を結ぶ路線の交通量は、平日の東名高速の実に5倍以上、ゴールデンウィーク(GW)時の混雑路線の交通量の5倍近い。
工業団地とジャカルタを繋ぐチカンペック高速道路も、日本と変わらない片側2車線区間が主でありながら、日本のGW時の混雑の3倍近い交通量を示しており、単純に考えて渋滞の待ち時間及び距離も3倍近いということになる。しかも、この状態が平日、休日を問わず慢性化しているというのだから、現地民の難儀は察するに余りある。更に追い打ちをかけるように、インドネシアでは国民所得の増大に伴って自動車普及率が上昇を続けており、都市部での渋滞は激化の一途をたどっている。
この結果として、現在のジャカルタでは、自動車の占有面積の合計が道路総面積以上に達して道路交通が麻痺する「グリッド・ロック」に近い状態が現出しているとされる。行政側は、マイカー通勤を減らすために、専用レーンを走るバス路線を張り巡らせる等の対策を採ってはいるものの、渋滞を大幅に緩和できる目処は立っていない。恒常的な渋滞は物流にも大きな支障を来しており、進出日系企業からもその改善を望む声が多い。インドネシア政府にとっても、国内の石油燃料の消費を減らし、燃料用補助金への支出削減を図る意味で、大都市での渋滞解消は喫緊の課題となっている。
その抜本的な対策として、インドネシア政府は日本の支援により「首都圏投資促進特別地域(MPA)構想」を推進している。これは、ジャカルタへの通勤用の地下鉄や空港へのアクセス鉄道の敷設を含む大規模なインフラ開発計画で、2012年10月の両国閣僚級関係者からなる合同委員会で承認を受けた。この地下鉄は2016年には一部区間が開通する予定とされており、渋滞対策の切札として期待が高まっている。
しかし、2012年12月時点では、ジャカルタ州の財政上の問題により、この地下鉄計画の存続も危ういことが報道されている。国内各所に建設中の高速道路についても、土地収用問題の影響で工事が遅延しており、完成の目処が立たない状態が続いている。ともあれ、ジャカルタ市内で軽快なドライブを楽しむことができるのは、まだまだ当分先のことになりそうである。
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