地域・パブリック 経済・ビジネストピックス
行政キャッシュフロー計算書は地方公会計の論点にどう答えるか

~発生主義、複式簿記など~

2010年11月24日

地方自治体の世界にも、民間企業でいう財務諸表がある。財務4表として総務省から提示されているものでは貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書及び資金収支計算書があり、そのうち「行政コスト計算書」は民間企業でいう損益計算書に相当する。これには2つの様式があり、ひとつは総務省方式改訂モデル、もうひとつは基準モデルという。他方財務省から提示されているものは、「行政キャッシュフロー計算書」といい、財政融資の審査に使われている。民間企業でいうキャッシュフロー計算書と同じものであるが、使われ方をみると損益計算書に近い。正確にいえば、銀行が融資先の審査に使う、現金ベースに引き直した修正損益計算書と言ったところだ。地方自治体版の財務諸表には他にも「東京都方式」などの流派がある。

いずれも従来型の地方公会計(歳入歳出決算書)が抱える問題を財務会計の手法で解決しようとした研究の成果なのだが、考え方の相違によって複数の流派に枝分かれした。地方公会計には、貸借対照表、発生主義、複式簿記、連結会計などの論点があるが、それぞれ企業会計に近づける観点から導入が必要だという方向で議論されてきた。一方、これらの導入について行政キャッシュフロー計算書は消極的である。企業会計への準拠といえば行政キャッシュフロー計算書が想定する財務分析が民間にもっとも近いにもかかわらず、である。どうしてだろうか。本稿ではまず行政キャッシュフロー計算書に内在する会計目的について明らかにした上で、それが民間流の分析手法を地方自治体に適用するにどのような課題を見出しいかに克服したのかについて考えてみたい。この延長で、発生主義や複式簿記など地方公会計を巡る議論について会計目的の切り口から整理をこころみる。

行政キャッシュフロー計算書に内在する会計目的

行政キャッシュフロー計算書は目的が比較的明らかである。本来的には地方自治体の返済能力を検証する道具として作られている。返済能力とは財政の持続可能性に他ならないことから、転じて自立的な行政経営に行政キャッシュフロー計算書を活用できるということだ。債権者には償還確実性が、住民等には財政の持続可能性が、行政経営にはキャッシュフロー経営の観点で財政改善を企画立案そしてモニタリングのポイントが一目見てわかるように表示項目とその配置が決められている。「形態は機能に従う」のである。

財務状況についていえば、行政キャッシュフロー計算書は財務状況の悪化を「把握」するだけでなく、その原因を「分析」することもコンセプトの内にある。財政の悪化を把握するならば、実質公債費比率を含め4つの健全化判断比率もよいだろう(それにしても債務償還年数すなわち返済能力の観点はこの指標群に含まれていないが)。しかし把握のみならずその要因を分析するということであれば、行政キャッシュフロー計算書のほうが便利である。財政悪化を示す債務償還年数その他のキャッシュフロー分析指標の悪化要因を、行政キャッシュフロー計算書の項目をもって追跡することができるからである。

総務省方式モデル、基準モデルで作られた財務書類においては健全化判断比率と直接の関係はない。たとえば、借入の大きさを財政規模との比で表す財務分析指標をみてみよう。キャッシュフロー分析指標の「実質債務月収倍率」の分母たる行政経常収入は行政キャッシュフロー計算書の最上行にあるそれと同じである。だからして「実質債務月収倍率」の悪化要因を行政キャッシュフロー計算書に追うことができる。一方、健全化判断比率のひとつ将来負担比率の分母は「標準財政規模」であるが、これは行政コスト計算書の「経常収益」とは異なるものである。

貸借対照表がないのはおかしいか?

地方自治体に貸借対照表がないのはおかしいという議論は、地方財政を把握するにあたってストック情報が重要だという問題意識に発している。従来軽視されてきたストック情報が重要であることは論を俟たない。が、それが貸借対照表という開示形態でなければならないのか。ちょっと立ち止まって考えたい。

とある会議の議事録に「貸借対照表もないところにどうして融資するんだ」という意見をみた。一見もっともな御説と思える。実際のところ銀行はどのように貸借対照表を見ているのか。債権者は貸借対照表上の資産を、破たんしてキャッシュフロー償還ができなくなった場合に充てられる返済財源という目でみる。担保権を設定できるものと言い換えることもできよう。だから資産を売却価格で再評価して、審査用に作る実態ベース貸借対照表の当該項目を修正する。担保設定するときにはなお厳しい査定を施す。換金価値のないものは手持ちの実態ベース貸借対照表から取り除く。実態は役員報酬なのだがまともに払うと利益が減ってしまうので敢えて資産の部に載せたような「役員仮払金」、既に別の担保に入っている保険積立金などがその例だ。

貸借対照表に関する分析指標に「自己資本比率」がある。資産合計と純資産の比率から財政状態の安全性を評価するものだ。債権者の文脈でいえば純資産は未だ借入金の引当になっていない資産であり、自己資本比率は担保余力を意味するものとなる。負債の「持ち主」からみれば、それが総資産でいかにカバーされているかを推し量る指標でもある。相場が下落して資産合計の換金価値が目減りしてもなお負債以上の換金価値が残っていれば安心だ、と彼らは思う。このような見方をするから、債権者にとって資産は売却価格で評価されなければならないものとなる。

行政キャッシュフロー計算書を活用した財務分析に貸借対照表の発想は特にない。貸借対照表の目的はそこから弁済能力を読み取ることであるが、地方自治体の貸借対照表はそうなっていないからだ。地方自治体の貸借対照表の資産の部にリストアップされる資産には換金性のないものが多くある。道路がよい例だろう。総務省改訂モデルの貸借対照表には、なんと有形固定資産とは別に「売却可能資産」という項目がある。ボリュームは有形固定資産のほうがはるかに大きいが、これがすべて「売却不可能資産」ということか?!

総務省改訂モデルの貸借対照表(百万円)

たぶん、これからも民間ばりの貸借対照表が作られることはない。仮に貸借対照表を売却可能資産ベースで作成したら債務超過になるケースが多いだろうからだ。言っておくがここで債務超過だったとしてもそれは企業に対してそうであるように倒産状態であるということではない。そもそも、地方自治体の財産には担保が設定できないし、団体を精算するという前提もない。だから債権者の文脈による安全性の観点で貸借対照表を見るわけにはいかない。とすると自治体の貸借対照表とはいったい何なのだろうか。その存在自体に矛盾をはらんでいるように思えてならない。

行政キャッシュフロー計算書の分析においては、貸借対照表をアテにしないが基金の内容はじっくり見る。これは借入圧縮の原資となるからだ。決算書に記載されている基金の額が大きかったとしても換金性がなければ弁済能力としてみることができない。とある事業体に「運用」していて返済の見込みがたたないものなどである。財務分析にあたってそうしたものは基金の金額から控除してしまう。負債額も同じように精査する。決算書に記載されている地方債現在高以外に隠れ借金があるようであればその分を加算する。銀行のように、行政キャッシュフロー計算書の分析においても表面上の決算数値をうのみにせず丁寧に精査し加減算を施すのであるが、その結果を一覧表にしたものが本質的には貸借対照表であると言えなくもない。

そもそも地方自治体の貸借対照表に何が期待されていたのだろうか。ひとつには資産・債務改革があった。「簡素で効率的な政府」を実現し債務の増大にブレーキをかける観点から、「行政改革の重要方針(平成17 年12 月24 日閣議決定)」及び「行革推進法案」において、地方も資産・債務改革に積極的に取り組むものとされていた。資産・債務の適正な管理や資産の有効活用等に資するべく貸借対照表の作成が奨励されていた。こうした文脈をたどれば、総務省改訂モデルの貸借対照表が敢えて「売却可能資産」を区分表示した意図も理解できる。それにしても、資産売却による財政のスリム化を意図するものなら売却可能資産をリストアップした財産目録で必要かつ十分なのではないかと思う。貸借対照表の様式だと、それを使って財務分析をするつもりで読んだとき誤解を招きやすい。

現金主義よりも発生主義が優れているか?

歳入・歳出で区分する現行の決算書では財政運営の良し悪しがよくわからない。歳入と歳出の差額が黒字だったとしても、それは企業業績が良いことをいうときの「黒字」と同じ意味ではない。努力して税収を増やせば歳入は増えるが、借入が増えても同じようになる。効率化の結果も歳出減であるが、借金返済をちょっと待ってもらったときも歳出は減るという具合だ。そうしたわけで歳入歳出を行政サービスによるものと、公共投資などのよるものと、借入と返済によるものに区分する必要がある。ここまでは行政キャッシュフロー計算書においても共通の問題意識を持っている。

総務省方式改訂モデル及び基準モデルは、支出の解釈において発生主義を重視している。支出とは別に、コストという本質的なものが発生しているという考え方だ。具体的には、耐用年数に渡って支出を繰り延べて単年度毎の「コスト」を認識することとしている。図書館を新築したとして、その図書館は何十年も使うのであるから、建設費は当年度に一括払いした事実をそのまま単年度に計上するのではなく、実際に使用する何十年分かに分けて計上することにする。

図書館で本を1冊借りるのに必要な行政コストが300円だったとする。これには図書館の建築費用も発生主義ルールを踏まえて添加されている。これは、近くにあるマンガ喫茶やブックレンタルショップの使用料金と比べて高いか安いかを本の性格や利便性なども踏まえた上で議論する材料になる。老朽化した図書館を建て替えるか、介護施設に用途を換えるか、それとも売却して借金返済にまわすか。こういったことを判断するのに適している。

カフェバーでワインを注文するとき、ディスカウントストアに比べてなんて高いのだろうかと思ったことはないだろうか。外で飲むワインの価格に、店舗や内装、シェフやスタッフの人件費が按分されたものが積み上げられているからだ。地方自治体が提供するサービス、たとえば図書館のレンタルサービスも市役所で毎週開かれている無料法律相談ブースも同じことである。直接費だけでなく庁舎建設費その他の間接費を積み上げたコストを示されると、受益者負担と比べていかに恩恵にあずかっているかを理解することができる。それが正確なコスト計算の意義である。

これを自治体全体の決算で表現したものが行政コスト計算書である。企業の損益計算書に見慣れた目でみると行政コスト計算書はわかりにくい。経常収益が非常に小さく大赤字の会社のように見える。先に示したように、その有用性は公共施設や行政サービス毎に区分したときに実感できるのだ。損益計算書のように使おうとすると誤解が生じる。

さらに、こと財務分析の観点からは、発生主義よりもキャッシュフロー経営がむしろ重要なのではないかと私は考える。たとえ効率のよい経営をしていても、現金がなければ支払に窮して持続可能性に問題が生じる。行政キャッシュフロー計算書はその名の通り「現金主義」である。与信審査の世界には「利益は意見、キャッシュは現実」という格言がある。「黒字倒産」という言葉があるように、発生主義ルールでいう利益を計上していたとしても支払に窮して倒産してしまうことがある。利益はあくまで尺度であり、必ずしも現金の増加を意味するものではない。返済能力を診断する観点も同じである。キャッシュフロー経営の重要性がいわれて久しいが、行政経営においても同じである。返済能力とは財政の持続可能性に他ならない。転じて自立的な行政経営を目指すのであれば行政キャッシュフロー計算書がナビゲーションシステムとして役に立つ。

単式簿記よりも複式簿記が優れているか?

地方公会計、中でも基準モデルや東京都方式において特徴的なのが複式簿記である。家計簿のような単式簿記では現金の入出金状況しかわからないだろうということだ。

単式簿記をベースにしたままでも、歳入、歳出ではなく、手元の現金や銀行に預けている預金の残高が増減する都度、入金または出金伝票を起票してキャッシュフロー計算書の内訳項目を記録してゆくことで複式簿記と結果的に異ならないのではないかと思う。週末月末の区切りで入出金を集計すればキャッシュフロー計算書(試算表)ができあがる。期末には支払累計額が借方、入金累計額が貸方となる試算表となるので、これに減価償却等の修正を加えることによって発生主義の貸借対照表を作成することもできる。そうしたほうがよほど正規の簿記原則に近いと思うのだが。具体的には去る8月4日に「自治体のキャッシュフローマネジメントのすすめ~手元資金ベースの地方公会計とその活用についての提案~」に書いた通りだ。

連結ベースの分析が重要か?

地方自治体の本体(普通会計)のほかに、上水道、下水道、病院その他の公営企業、外郭団体をすべて連結して財務諸表を作ったほうがよいという考え方がある。連結財務諸表の場合、構成団体の借入、収入を合算し、さらに構成団体の間の取引を相殺消去する。たとえば地方自治体本体から公立病院に流出する繰出金と、反対に公立病院が地方自治体から受け入れる繰入金はお互いに消去するべきものとなる。地方自治体は皆がイメージする市役所業務だけでなく、上下水道会社、コンサートホールに体育館に野球場、病院、バス会社、ときには動物園などあらゆる生活サービスを提供する企業グループのようではある。企業グループならば財務分析にあたっても単体ではなく連結ベースで把握したほうが一見よさそうだ。

反面、行政キャッシュフロー計算書は地方自治体の単体(普通会計)をベースに作られている。連結によって見えなくなるものが多いと考えるからだ。行政キャッシュフロー計算書はあえて連結を志向せず、繰出と繰入の関係が「見える化」するメリットを重視している。たとえば、公立病院の赤字補てんが財政悪化の要因だったとする。下水道事業の不振が財政の足を引っ張っているケースもよく見られる。こうしたことが連結環の相殺消去で見えなくなってしまうリスクを懼れている。現金ベースの利益率である行政経常収支率が低い場合、ここで公立病院に対する繰出金増の影響が大きいのであればそれが財政悪化の原因となっていることがわかる。こうしたことが、あえて繰出と繰入の関係を「見える化」するメリットなのだ。もっとも行政キャッシュフロー計算書では、構成団体の借入をすべて合算するということはしないが、前もって実施する実態修正のプロセスで、将来的に親団体の負担となるだろう負債を予め見積もって親団体の実質債務に加算することを行う。連結決算が総額で合算するのに対し、行政キャッシュフロー計算書は将来負担の純額で合算していると言える。結果的には、行政キャッシュフロー決算書による分析も実質的には連結ベースで把握するのと同じことだ。

地方公会計の作成方式は統一すべきか?

総務省方式改訂モデル、基準モデル、東京都方式そして財務省方式(行政キャッシュフロー計算書)。いろいろな流派があって横一線の比較ができないという意見がある。それはそうだが、目的が違うから形式が異なっているという側面もあり、無理に統一したモデルを様々な目的で使うことこそかえって不合理な話である。

企業会計でいう損益計算書に相当するものといえば、総務省その他が示す行政コスト計算書と財務省が示す行政キャッシュフロー計算書があるが、行政コスト計算書は損益計算書とは似て非なるものであり、あくまで行政サービスの正味コストを計算したものである。既に述べたように、その有用性は公共施設別、行政サービス別に分けてみるとよくわかる。住民や行政が、当の施設やサービスが割高か割安かを知るのに役にたつ。これはこれで意義がある。どんな車を買おうかと考えるとき価格とスペックのバランスは気になるが、メーカーの企業業績が良いとか悪いとか決算書までみる人は多くなかろう。

反面、地方自治体を企業としてみたときに、行政コスト計算書を使って財務状況を診断するには違和感が残る。なぜだろうか。本質的には、損益計算の手段を採り入れながら、その目的が損益計算でないからだと思う。発生主義は期間損益計算の必要から生まれた企業会計の方法である。しかし行政コスト計算書は利益ではなくコストの計算を目的としている。

また、企業の損益計算書に見慣れた目でみると行政コスト計算書はわかりにくい。経常収益が非常に小さく大赤字の会社のように見える。経常収益に税収を含めていないからだ。これは住民を顧客とみるか拠出者とみるかの違いに由来している。地方公会計は拠出者と捉えている。「確定拠出年金」という言葉や保険を想像すると分かりやすいが、拠出とは相互扶助等を目的にお金を出し合うイメージである。地方公会計の文脈には受益者負担でカバーできなかった部分をみんなで補てんするスキームがあるようだ。財務4表のひとつ純資産変動計算書は、常に「赤字」である行政コストを住民からの税金で補てんするような算式体系になっている。これを行政経営の発想でみようとするから違和感が生まれる。住民を拠出者ととらえる地方公会計は、住民を顧客と捉える行政経営としっくりこない。新しい行政経営(New Public Management)は効率よく行政サービスを提供し顧客満足度を高めることがコンセプトである。地方自治体と住民の関係を、行政サービスの提供者と受け手の関係と捉えている。これを財務諸表に反映させるとすると、行政サービスのコストと対価が対応関係、少なくとも期間対応になると考えるのが自然だ。

行政キャッシュフロー計算書は、債権者には償還確実性を、住民等には財政の持続可能性を、行政経営には財政改善のポイントを説明(account)するように作られている。本来的には地方自治体の返済能力を検証する道具として作られている。返済能力とは財政の持続可能性に他ならないことから、転じて自立的な行政経営に行政キャッシュフロー計算書を活用できるということだ。行政キャッシュフロー計算書の科目「行政経常収入」は行政サービスの対価と位置付けられ、住民を顧客と捉える行政経営の考え方に矛盾しない。財政の持続可能性という制約条件の下、最小のコストで最大の顧客満足度を実現するために何をするか考えるツールでもある。行政コストとその対価が期間対応しているのにはこのような意味がある。

同じ団体の「損益計算書」でも考え方でこれだけ変わる

付け加えるが、行政キャッシュフロー計算書はそれを全国揃って作成しなければ意味がないというものではない。相対評価の重要性は低い。たとえば、分析指標において下位グループに属していたとしても好況で地方財政が全国的に良好であった年の話であれば、財務状況に問題はなかろう。反対に、たとえ県内平均点をキープしたとしても債務償還年数が30年となれば財政の持続可能性に問題ありだ。他に比べてどうかよりも、分析指標の水準そのものが重要である。

(参考)
行政キャッシュフロー計算書については次の記事も参照されたい。
行政キャッシュフロー計算書を用いた地方財政分析」(2008年12月3日付コンサルティングインサイト)
行政キャッシュフロー計算書の利害調整機能」(2009年2月13日付大和総研コラム)
自治体財務書類は何に役立つか」(2009年6月3日付コンサルティングインサイト)
財務省は自治体の何を「診断」するのか? ~一括交付金制度で変わる地方財政の見方~」(2010年7月1日付コンサルティングインサイト)

金融検査マニュアル
Ⅰ.「債務者区分」とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により、返済の能力を判定して、その状況等により債務者を正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に区分することをいう。(「別表における留意事項」から)

債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するものである。(「自己査定(別表1)」から)

(筆者註)ここでいう「キャッシュフロー」は、「当期利益に減価償却など非資金項目を調整した金額」(金融検査マニュアル)であり、行政キャッシュフロー計算書では「行政収支」に相当する。

財政投融資改革の総点検フォローアップ(平成17年12月12日)
なお、平成18 年度からの地方債協議制度への移行等を踏まえると、地方公共団体の財政健全性の維持・向上を促すような環境づくりが重要であり、地方向け財投については、融資主体が貸付先の財務状況、事業の採算性等を適切にチェックしていく枠組みが重要である

(筆者註)行政キャッシュフロー計算書はこの目的に沿って作られている。

財政制度等審議会 財政投融資分科会 議事録(平成18年7月26日)
〔上野計画官〕それから、もう1点の役割分担の話でございますけども、もとより私どもと総務省とは、自治体に対して見る立場、観点が違うわけでありまして、この分科会でもご指摘をいただいたのは、融資主体としての私どもの融資審査の充実という立場からの財務状況の把握という点でございます。総務省は法律上の地方自治体に対する別の立場からの権限をお持ちでございますので、私どもも今回ヒアリングをやるに当たりまして、自治体の負担がいたずらに増えないようにということで、私どもの独自の観点から、財務状況の把握を効率的にやっていくという点に十分に留意いたしたところでございます。

(筆者註)役職は当時のもの。行政キャッシュフロー計算書は地方自治体の返済能力を検証する道具として作られている。返済能力とは財政の持続可能性に他ならないことから、転じて自立的な行政経営に行政キャッシュフロー計算書を活用できるということだ。逆にいえば、中央集権体制の下で出先機関としての地方自治体を想定した場合、残念ながら行政キャッシュフロー計算書は役に立たない。

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